novel

□社内旅行 B
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−−海岸を歩いていくとだんだんと人気もなくなり、釣りをする年配者が数人いるだけの岩場に出た。


「このあたりで魚釣れるんでしょうか」


「あんまり釣れてそうじゃないけどね」


確かに釣り客は皆暇そうにだった。



岩場では心地よい海風が吹いていた。


「わぁ…涼しくて気持ちいい」


適度な潮の匂いと比較的湿度の少ない乾いた海風を感じ、絵梨は目を閉じた。


その瞬間、突然、強い風が吹き、絵梨の水着のスカートがぶわっとめくりあがった。


「キャッ」


とっさにスカートを押さえたが、少し離れた所に立っていた係長からは全部見えたに違いない。


すぐに目を逸らしてくれたが、一瞬、絵梨の水着のパンティがはっきり見えたに違いない。


(わー恥ずかしいっ!)

水着のパンティとはいえ、元々ビキニだったのならともかく、スカートで隠れているパンティを見られるというのはかなり恥ずかしいものだった。

こういう場合、どうすればいいんだろうと悩みながら西川係長を見ると、ちょうど絵梨に背を向ける形で別方向を見ていた。

(あ…、気、遣ってくれたのかな…)


ほっと息をつく。


(さっきから胸あたったり恥ずかしいことばっかり…。ていうか、なんか意識しすぎよね…。あーもう、別に全部事故なんだし、忘れよっ)


気持ちを切り換えると、再び顔を上げて西川係長の方を見た。



細身だが広い背中だった。


風に乗って、日に焼けた男の匂いを嗅いだ気がした。


突如、絵梨の心に胸が締めつけられるような気持ちが溢れた。



抱きついてみたい…この人の背中に…。



いつのまにかそんなことを考えていた。



つづく
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