novel
□社内旅行 B
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絵梨は西川係長と砂浜を歩いていた。
大勢の人で賑わう海辺。
家族連れやカップルが多いなか、自分たちはひどく不自然に思えた。
自分たちはどういう関係に見えるのだろう…。年は10ほど離れているが、他人から見れば恋人同士に見えるのだろうか…。
海や人ごみを見ながら、ちらりと隣にいる西川係長に目を向ける。
さきほどの視線はなんだったのか…。自分の胸元に向けられていた西川係長の視線を絵梨は思い出していた。
胸はそれほど大きくない。でも、形は悪くないと思っている。少しなら、谷間もある。クールそうに見えるけど、西川係長もやっぱり男だし…。
「あのさ」
考えにふけっていると、ふいに係長に声をかけられた。
「はっはい?」
絵梨はうわずった妙な声で返事をしてしまう。
「えーと、その…ここんとこ…」
係長が絵梨の胸を見た。
(なっなに!?胸のこと?)
「その…ここんとこに、海藻みたいなの、ついてるよ…?」
そう言って係長は自分の胸の下あたりを指差した。
「えっ?」
絵梨も自分の胸の下あたりを確認する。自分ではちょうど胸に隠れて見えない位置だった。
「わっなにこれ!」
見ると、2センチ程のワカメのようなビラビラの海藻がべっとり貼りついていた。
「気持ち悪い〜」
気がついた途端に貼りついていた嫌な感触に気づき、急いで取り払った。
(あ…)
そして絵梨は気づいた。
(だからチラチラ見てたのかぁ…)
少しだけガッカリした気持ちになった。
(え、ガッカリ…?)
絵梨は自分の気持ちに驚き焦った。
(な、ガッカリしてるんだろ!欲情されてるとでも思って喜んでたわけ?ばかみたい…)