novel
□社内旅行 @
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社会人になって数年、この春初めての人事異動で新たな部署に配置された絵梨。
異動して4カ月が過ぎ、課内でやや遅い親睦旅行が企画された。
−−バスで目的地に着くと、旅館の前に海が広がっていて、期待していたよりもずっと青く綺麗だった。
早速水着に着替え泳ぐことに。
課内は、男性25名、女性6名という構成。女性のなかでは絵梨が一番下っ端で、他5名は課長級、係長級、と皆肩書きがある。
そんなわけで絵梨は、旅行中、共に行動できるような同僚の女友達はおらず、少しさみしい思いをしていた。
それぞれが海水浴やマリンスポーツを楽しんでいるなか、絵梨は一人砂浜で海を眺めていた。
「泳がないの?」
ふいに声をかけられ、見上げると、西川係長が立っていた。
「あ、ちょっと休憩です」
西川係長は直属の上司ではなく、一緒に仕事をしたこともないため、あまり話をしたことがなかった。
眼鏡をかけたちょっと男前で、身長176センチ、体格はやせぎみ、といったところか。年齢は36〜7歳、妻子…あり。
課内にものすごい男前はいないが、強いて一人挙げるなら彼だろう、と絵梨は密かに思っていた。