その他
□snow white-snow heart
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今回、私達は卒業旅行として立海テニス部レギュラーで北海道へやって来た。
2泊3日のスキー旅行はあっという間に過ぎ、早いいもので明日で最終日となった。
忙しいながら、充実したスキーはとても楽しく、もう明日の昼過ぎには帰ってしまうんだと思うと淋しい。
折角スキーも人並みに滑れるようになったし、これからだというのに本当に残念だ。
窓の外に広がる雪を眺め、自然と溜め息が零れた。
窓には買い物荷物を抱える私が映っていて、何だか物足りなさそうな顔をしていた。
窓向こうには照明が灯り、ナイターを楽しむ人も見える。
こんな明かりが少なく、視界の悪い中滑れるなんて凄いな。
ぼうっと外を眺めていると名前を呼ばれた。
振返るとラフな格好をした柳生が居た。
柳生は私の横まで来ると、同じように外を眺め「もう明日で最後ですね。」と呟いた。
「3日は長いと思ったけど、実際は凄く短いよね。もう明日で終わりだなんて早すぎだよ。」
あと1週間は北海道を楽しみたいよね。
そう投げ掛ければ、柳生も深く頷き「ええ」と返してくれた。
本当に短い。
まだ北海道の事をほんの一部しか知れてない。
ふと、窓を見上げると、柳生と目が合った。
柳生もそれに気付いたのか、窓を通して笑んでくれた。
「ねえ柳生。折角だから外に出てみない?」
「え、ですが貴女は薄着ですし風邪を引きますよ。」
「大丈夫!すぐ戻れば平気だって。折角イルミネーションされてんだし、それも見なきゃ損だって!」
このホテルにはスキー場がすぐ真横に設置されていて、更に雪でダルマやキャラクター、電飾での様々ななイルミネーションも施されて居る。
昨日は移動やスキーでヘトヘトだったから、イルミネーションは見る事も出来なかった。
それは勿体ないと、私は柳生の腕を掴み玄関口まで引っ張った。
ずっと風邪引きますよ!と喋り続けていた柳生だったけど、私が聞かないと解り諦めたのか、玄関のサッシは自分の意思で跨いでくれた。
「うわあ、綺麗!凄くキレイ!!」
目の前には沢山のイルミネーション。
ホテル横に散歩道の様に電飾が並び、美しい光を灯していた。
寒いけど、こうやって見るだけの価値はある!
私は目をキラキラと輝かせ、隣りに立つ柳生の腕を引っ張った。
「キレイだよね!」
私の勢いに押されたのか、それともこのイルミネーションの美しさにほだされたのか、柳生は柔和な笑みを浮かべて見せた。
いつもよりずっと柔らかく、温かい笑みに見え、柳生の笑顔に不覚にもドキリとしてしまい、私は急いで顔を背けた。
きっとイルミネーションがキレイで、それを一緒に見ているせいだ。
綺麗な物と一緒だから、脳が勝手にキレイな者と変換したんだろう。
顔を背けた私はかなりおかしかったらしい。
柳生は少し屈み、心配そうに私の名前を呼んだ。
「寒いのではないですか?そろそろ戻りましょうか。」
「寒くはないよ。そうじゃなくて…」
柳生の顔を見るとさっきの笑顔を思い出してしまい頬がほてる。
心臓も普段より一生懸命働きうるさい。
言い淀んでると再度名前を呼ばれた。
「大丈夫。あ、じゃあ最後にあれ見て帰ろう!」
私は視界の隅でチラチラと光っていた電飾を指差した。
それは少し先にあり、背の高い逆傘状の物に電飾を絡めツリーにしたものだ。
柳生が何か言う前に腕を引っ張り、大股でツリーへと向かった。
外気はずっと冷たく、身を震わす程なのに、頬はずっと熱い。
ほてりを冷そうとツリーを目指したのに、そこでまた私は顔を紅くし、心臓が死にそうになってしまった。
高く透き通る蒼と、全てを吸い込む様に静かに美しい紺の空。
どこまでも続く白銀の大地。
柳生の笑顔、煌びやかなイルミネーション。
初めての北海道旅行は本当に楽しく、忘れられない思い出となった。
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