小話

□フルスケール
1ページ/1ページ


遠くで誰かが呼ぶ声が聞こえる。
目の前は真っ暗。
(母さん?まだ夜中だよ寝かせてよ…)

『現場に到着。一人は意識混濁、もう一人は未だ意識不明』

現場?何のこと?オレは確か雲雀さんの住処の一つで雲雀さんとお酒飲んでて…ああ駄目だ頭が働かない。
誰かが体に触れてくる。雲雀かと思ったがすぐに違うと気づいた。
身を捩りたかったがどうにも体が動かせない。
何か薬を使われたのだろうか。日本に、並盛に来ると安全すぎてついうっかりしてしまうが仮にも綱吉はマフィアのボスなのだ。
いつ誰が命を狙ってるか分からない。
己を叱咤し、薄れそうになる意識を必死に繋ぎ止める。何とか自分の置かれた状況を把握しなければ。
背後から体を持ち上げられる。と、下半身に違和感。
何かあるっていうか入ってるっていうか。何かもぞもぞする。

『…駄目だ、このまま乗せて運ぶぞ。』

体を戻されれば肌に当たるは感じ慣れた体温。それだけで少し安堵する。
雲雀が傍にいるのは間違いない。
しかし人の気配に敏感なあの人が沈黙しているのはおかしいのではないか。
そういえば最初に聞こえてきたあの言葉。
『一人は意識混濁、もう一人は未だ意識不明』
意識不明…。
(雲雀さ…)
確かめたくていくら動こうとしても体はぴくりとも反応してくれない。
一瞬の浮遊感の後、何かに横たえられた感覚。そして再び浮遊感。

『このままじゃ人目につく。何か掛けるものを…おい毛布持ってこい!』

自分たちはどこへ連れていかれるのだろうか。
体が少しでも動かせればスーツの内ポケットに入ってる携帯で外に…。
体に毛布が掛けられる。と、そこではたと気づいた。
やけに毛布が肌に近いのではないか。いやその前に、服を着ているはずなのに相手の体温が近いのはどういうわけだ。

ていうか自分たちは果たして服を着ていたっけ?


遠くの方で声がする。

『大丈夫ですか聞こえますか!?もう大丈夫ですから!そのまま意識をしっかり保って下さいね!』
『急性アルコール中毒の患者二名、その、諸事情で離せないためこのまま搬送します』



ああ思い出した。今日は二人とも気分が良くていつも以上のペースで飲みまくってベロベロの状態でセックスになだれ込んで。
それじゃあこの声の人たちはマフィアでも刺客でも何でもなく、普通に駆けつけてくれた救急隊員さんたちで、オレと雲雀さんは全裸で下半身に違和感で…。

そこまで考えて無意識に締め付けたら中のモノが反応して大きくなったので。




ああこれが夢であれ!と、綱吉は意識を手放した。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ