main story 金盞花W

□金盞花 番外編 【Scissors】
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「よく降るよなァー....もう三日だぜ、三日。」



一般的に霊界と呼ばれる尸魂界にも四季がある。

夏は茹だる様な暑さで冬は身も凍る程の寒波に包まれる。
しかも今年は例年に無い大寒波が尸魂界を襲った。





「ったく....いつまで雪かきしなきゃなんねぇーんだろうな。」


積もり続ける雪は果てを知らず
おかげで俺は冷え切った身体を休める暇すらない。

ホントなら
後腐れない女を抱くのが一番なんだろうけど、アレ以来俺の心は後腐れない女を抱いたぐらいじゃ溶けなくなってしまった。





「なぁ、阿散井。
お前はどう思うんだよ。」

「どう思うって?
雪かきがいつまで続くかって事っスか?」


その赤髪と同様、鼻や頬を染めた阿散井は素手でスコップを持ち大量の雪をすくい続けていた。

こういうトコは真面目だよなァ....なんて関心しながらも、俺の心が別のトコロにあった。







なぁ、矢吹。

お前が此処を去ってもうすぐ2年が経つよ。


にも関わらず俺は
降り積もる白にお前の影を見てるんだ。

そう、どこか冷たく....そして暖かくする矢吹の姿を。










金盞花 番外編


【Scissors】


















結局、一日の労働時間をその半分以上もオーバーした俺らは疲れきった身体を引き摺りながら隊舎に戻った。

と、こんな事がもう何日も続いていた。


阿散井は一回自室に戻って仮眠を取るって言ってたけど静霊廷通信の編集が残っていた俺に選択肢は無かった。





「眠ィー.....」




徹夜で雪かきをして今度は活字地獄だ。

迷う事なく副官室にある長椅子に横になった俺は提出された書面へ目を通し始めた。







「ボツだらけだし....」

普段ならば気にならない箇所も
疲れきった頭と身体には目に付くものだ。




「おい!
鷺沼、鷺沼三席はいるかァーーーー!!!!」

鷺沼は矢吹が異動した後にその席に就いた男だった。





「はい!
お呼びでしょうか。」

「お呼びでしょうかじゃねーよ。
お前ちゃんと文面読んだのか!?起承転結は出来てないし誤字脱字だらけだ!こんなんじゃ出版出来ないだろ!!!」

「すみません!!!」





膝に額が付くんじゃないかってぐらい頭を下げた鷺沼。




それってズリーよ。

そんな風に頭下げられちゃ....それ以上のコトは言えねぇじゃん。




「次から気をつけろ」

「はい!」


そう答えた鷺沼は再び頭を下げてから部屋を出て行った。












すみません!

それだけなら誰にだって言える。


謝るんじゃなく
それなりの仕事をしろ!と....そうアイツに言えたらどんなに良いか。



頭では解かってるけど
そうしないのは、東仙隊長がそうだったからだ。








あの人は、どんなに大変な時もそれを顔に出さず、それどころか全てを一人でこなしていた。


それが九番隊で、九番隊を預かる者の導き方だと....あの人が去ってから知った。







「雪かきなんてしてる場合じゃないっつーの。」



やらなきゃいけないコトは山ほどあるのに、東仙隊長がいなくなったって理由であの人が守り続けた九番隊を壊すワケにはいかないんだ。









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