夢のカケラ

□□逃飛行□
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「このまま世界の果てへ 二人で堕ちてゆけたら…」



貴方を失うぐらいなら、貴方が私から離れてゆくぐらいなら、貴方を連れて逝こ
うと思いました。

貴方も、私が貴方の前から消えるのであれば、他に愛する彼女(ひと)もいない

ので、私が消える前に私と共に逝くと言いました。

その時私たちは互いに同じ想いでした。



何時しか二人の身体が溶け合って、ひとつになれば良いと思っていました。



しかし、何時からか愛している相手のことが信じられなくなりました。

雪のように降り積もる疑いが、互いの心を蝕んでゆきました。

貴方を疑って傷つけてはそんな自分を悔みました。

貴方も私が涙を流すのを為すすべも無く見つめていました。



私たちの愛は、雨が流れてゆくように静かに終わりへと向かってゆきました。

私たちが愛し合うことは罪なことなのでしょうか。

だから終わりが来たのでしょうか。



それなら互いを憎む前に何もかもが終わりになる前に、二人で世界の果てへ堕ち
てゆこうと思いました。



けれど、貴方は生きる理由を見つけてしまいました。

そして私にも生きてくれと言いました。

でも、私はもう貴方と共に生きることは出来ません。
だから私は、最後の思い出にと貴方と海を見にゆきました。

貴方が海を見ているうちに、貴方が私を忘れているうちに、私は少しずつ貴方か
ら離れてゆきました。

貴方が気付いてくれないかと思いながら少しずつ遠くへゆきました。

シンデレラのように、わざと濡れたサンダルを落としてゆきました。

そして振り返らず急ぎ足で貴方から去りました。



貴方は風が冷たくなる前に帰ったのでしょうか。

落としたサンダルには気付いたのでしょうか。

あれから暫く経つのにまだ貴方を忘れられない私が、此処にいます。



「彷徨うあてさえない 行き先は一つ 同じ空へ…」



私の心は今でも貴方と同じ空に…

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