夢・・・
□声が聞きたい
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『声が聞きたい。』
そんなメールをその人に送ったのが…3日前のこと。
『明日、連絡します』
そんなメールが届いたのが、2日前のこと。
待っているのに、電話をずっと胸のポケットに抱いて、待っているのに。
その人からの連絡はまだない。
忙しい人だから。分かっているんだけど。
まるで、恋人のようなメールのやりとり。でも、それはけしてそんなものじゃなくて、ちょっと、胸が痛む。
声が聞きたい。
ううん、声なら毎日聞いてる。部屋のステレオから流れる愛しいその人の歌声を。
でも、そんなのじゃなくて、私に、私だけに向けられた貴方の声が、言葉が聞きたい。
「元気?なかなか電話できなくてごめんね?また、遊びにいこうか」
果たせない、約束でも構わないからまた、私にその言葉を言って欲しい。
文字なんかじゃなくて、貴方のその声で。
貴方は、私には手の届かない人で…凄く多くの人に恋心を抱かれている人で…それでも、私もやっぱり貴方が好きで。
「Prrrr…Prrrrr…」
突然、私の胸ポケットの電話が鳴り出す。
あわてて、送信者の名前も見ずに電話にでる。
「も、もしもし?」
「もしもし?みゆき?僕です。昨日連絡できなくてごめんね?元気?」
落ち着いた、低い声がゆっくりと、そう耳に届く。
「……っ…。」
何か言わないといけないのに、言葉に詰まってしまう。
「どうしたの?怒ってる?」
心配そうな貴方の声が鼓膜を優しく振るわせる。
違う。そんなんじゃない。嬉しいよ。声が凄く聞きたかったんだよ…っ…。涙がでそうで言葉に出来ない。
涙を堪えながら、何も聞き逃さない様に耳を澄ますとくすっと、小さく笑う声が聞こえた。
「…僕も、声が聞きたかったよ」
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みゆき様へ。返品不可です。相手は誰だか…分かりますよねー?