白昼夢

□今年も一緒に
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窓の内側から眺める、外の風景はとても穏やかで気怠い昼下がりを演出している。

貴方が、爽快な音を立ててビールの缶を開けて隣に座る。

「今日だけな」
「それ、昨日も言ってた」
「そうだっけ?」

ふふっと
笑いながら貴方の肩に頭を預ける。
こんなにのんびりしたお正月を過ごすのは何年振りだろう?

テレビに映るのは、漫才、一髪芸、コント。
色気なんて少しも無いけど、なんだか幸せな気分になる。

「明日から、また暫く会えないね」
「ごめんな」
「いえいえ、忙しいのはありがたいことです」

くしゃくしゃっと髪の毛を撫でられて、また少し笑う。

エアコンの風にアンセリウムがゆらゆらと僅かに揺れる。
私の大好きな女性の歌に出てきたその花は、冬になって紅い葉で部屋を彩る。
しあわせそうなあの歌の主人公にあやかりたくて、私も2人の部屋にこの花を買ってきた。

「私、幸せ者だなぁ」
「何?急に。」
「だって、そう思ったんだもん。」


アダムとイブの伝説を今なら信じられる。
貴方の肩はヤケにしっくりときて、私が貴方の一部から創造されたんだって言われてもなんの疑いも無く信じられる。


肩から離れて、テレビに既に意識を奪われている貴方をじっと見つめる。

「何か?」
「大好き」
「あら嫌だ、なんか気持ち悪い」
「あ、失礼!」
「ふはは。すまんすまん。だって、さっきから変だから」

笑う貴方に、ぷうっと膨れ
て見せる。


そんな私に、短いキスをくれる貴方。

「そっちこそ、らしくない。」
「そう?俺はいつでもこういうコトしたいですけど」
隣から抱きすくめられて、キュンと心臓が泣く。
「毎日、想ってる。」 
髪を梳く指の温かさが心地良い。
大好きな、貴方の香り。
今年も、一年このヒトと時を刻んで行くんだ。
ゆっくりと、確実に不安な日も、寂しい日も。

どんな日だって、貴方は今優しくて抱きすくめてくれているように、誰よりも近くで私を想ってくれているんだから。

外は、穏やかな昼下がり。
ほんの少しだけ風が出てきているけど、私たちのお正月はまだたっぷり残っているから。

頭をもう一度貴の肩にのせて、そっとため息をつく。
「今日は、のんびりしようね」
そう、特別なコトは何もいらない。
特別な貴方がいるから。

+end
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