白昼夢
□残酷なあなた
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すごく、すごくスキなヒトが居る。
貴方は、強くて優しくって......それから少しだけ意地悪。
デリカシーがなくって鈍感。
真剣な顔でコーヒーが冷めてしまうコトも気づかずに、私に彼女の話をする。
私は、とっくに空になったカップを弄びながら貴方の話を真剣に聞いているフリを続けている。
考えているのは、貴方の唇が柔らかそうだなとか睫毛が思ったより長いなとか、割りと日焼けしてるななんて全く関係ないことばかり。
きっと、貴方はずっと気づかない。
私が、貴方の話を聞きながら泣きそうになりそうなのを何度も何度も我慢してきたこと。
電話がかかってくる度に、ほんの僅かな期待と心臓のキリキリとした痛みに耐えていることを。
貴方は、話の最後にいつも言う。
「ありがとう。大丈夫な気がしてきた。」
私は、安心した笑顔に見惚れながらその言葉に傷つく。
「そんな、私なんか......」
2人の幸せなんて願ってないのに。
言えない本音をぐっと胸の奥に仕舞い込み精いっぱいの作り笑顔。
もう会わない。
そう、決められない自分を嘲笑う。
すごく、すごくスキなヒトが居る。
それは、優しくて強くて......鈍感で残酷な貴方。
いつか、哀しむ貴方の手をそっと握って見つめる日を夢見る。