白昼夢

□いつかは
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そう、あいつが言ったんだ。
「俺らは、お前のこと愛してるよ」
そんな、こっぱずかしいことよくもまぁ……口に出せたものだなぁ……。
って、その時は思った。
むしろ、引いた。ドン引きってやつ。
まさか、男から。
しかも、日本人の男から。
そんな、こと言われるなんて思いもしなかった。

それから、少し経ってからあれは「俺たちを信じて欲しい」と言いたいんだというのがわかってきた。
あいつはみんなの気持ちを代弁したんだ。

俺だって、別にみんなを信じているし。
頼りにしている。
ただ、その……何というかちょっとリーダーだから。
俺が少ししっかりしないといけないって思っているだけなんだ。

みんながつい着いてきてくれるような、みんなが納得してくれるような"何か"を作らないとって思っているだけなんだ。

そういえば、昨日も打ち上げの後に誰かから言われたような気がする。
もしかしたら夢かしれないけれど、確かに耳に残っている。

「俺たちは、ずっとあんたといるよ」

プロポーズだろ?これじゃ。

なんでだって、みんな寄ってたかって俺に愛を囁きだしたんだろう?
俺、なんかしたかな?
俺、酔ってなんか弱音でも吐いたんだろうか?

時々、思うんだけどどうして人間思いもよらない言葉を聴くとそれを理解するまでに必要以上に時間がかかるんだろう?
これも、音が言葉になってその言葉の意味がわかるまでにそれはもう時間がかかった。


あんまりにも恥ずかしくって独りホテルのバスルームで、俺は顔から火が出たのかと思った。
汗を流しながら、汗が吹き出るのを感じたのは今までの人生ではじめての体験だ。
ちょっとした罰ゲームかいたずらかとも思ったくらいだけど、それなら言うほうだってよっぽどのダメージだろう。
そう俺なら。
言うほうは大真面目だって考える方が妥当かな?なんて考えた。

俺は、これからどうしたらいいんだろうか?

「愛してる」なんて言われ。
「あんたといる」なんて言われ。

それは、もしかしたら言葉通りに。
暗に言いたいことをオブラートに包んだとかじゃなくて。


ただ、そのまま素直に。

受け止めたらいいんだろうか?


それは、まだ答えは出ないけれど。
いつか、俺がみんなに言う日がくるんだろうか?


「愛してる」なんて……。
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