短編

□傷を飲み込んだ或の日
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すきですすきですだいすきです。どれくらいすきかと聞かれれば、もう本当に死んじゃいそうなぐらいすき。あのきらめく銀髪も、三白眼気味の金色の瞳も、口元にある黒子さえ。ぜんぶぜんぶ愛しいんです。ぜんぶぜんぶ大好きなんです。例え世界中が彼の敵になっても、私だけは優しく包んであげたい!!!みたいな!!純粋で大きな愛なんですよこれ!!でもあの人はとっっても照れ屋さんみたいで、私が抱きつくだびに殴り倒すんです、しかもグーで。あっ、でも手加減はしてくれてますよ?だって口の中が切れて血が出る程度ですから!うはああああああそんな優しいところも大好き!!ああ、優しいと言えば、私が先日ついに我慢できなくなって、彼を尾行したときの話なんですけど!彼が住んでるらしいマンションまで嗅ぎ付けたんですが、彼は私が尾行していることに気づいてたみたいで、振り返って、『入りんしゃい。』って言ってくれて!マンションの中に入れてくれたんです!!!!もう私大興奮で大感激で!!放心状態でついて行ったらいつの間にか屋上にいたんです。おかしいなと思いつつ彼を見たら、にこりと笑って『実は俺は今家族と絶縁中でな、ひもじく不便だがここで暮らしてるんじゃ。』と言ったんです。あああああなんて可哀相な先輩!!!!こんな寒く寂しい場所で暮らしているなんて!!そして彼は親切にも、私の為にコンビニに温かい飲み物を買いに行ってくださったんですうええ!!!私はその気持ちだけでお腹いっぱいで幸せで、彼のことを愛していると再確認したのでした!!!でもなぜか先輩は一晩中戻って来なかったんですよね。きっと近くのコンビニに彼おすすめのジュースが置いてなくて遠出してたんだ!!うん!!!あああああっ!!!本当に優しい!!!!本当にかっこいい!!!本当にだいすき!!!!ずっとあなたのことを、あなただけを、愛し続けますからね!仁王雅治先輩!!!!


「におせんぱーいっ!!!」

「………………来た………。」

「もー、なんですかその反応ー。ほんと照れ屋さんなんだからー。」

「………どこからくるんじゃ、そのポジティブな思考は。」

「全身からです!!!そして今日も今日とて愛してますよ!付き合ってください!!!」

「死ね。」

「もう!またそんな言葉責めでごまかしてー!いや、そんなドSなにお先輩もすきですけどね!」

「マジ死ね。」

「だからそんな言葉責めしたって私嬉しいだけですから!うあああぞくぞくする!!」

「………。」

「………ん?何してるんですか?にお先輩?ケータイなんか取り出して。」

「お巡りさんに電話してこの変態ストーカーを逮捕してもらおうと。」

「え!だ、だれですか!?にお先輩の周りにストーカーが!?ちょ、なんで早く相談してくるないんですか!言ってくれたら私がすぐ血祭りにあげたのに………!!」

「…………お前さんの………、」

「え?」

「お前さんのことに決まっとろうがこの変態女ァァアアアアアア!!!!!」

「げぶぅううっ!!!」







――――――そして。今日も今日とて私は張り倒されてしまったわけですが、分かってます、私には分かってるんです。あれは愛のムチ…!ちょっとばかり行き過ぎた私のアプローチを叱る為の、愛の鉄拳なのです……!だからにお先輩、私は絶対あなたを諦めませんよ。かならず。どんなことがあっても。いくら傷を負っても、きっと飲み込んでみせます。だってあなたを愛しているから!


















傷を飲み込んだ或の日



「………柳生、俺詐欺師やめようかと思っとる……。」

「は?何を言ってるんですか!?仁王くん!!?あなたがそんなこと言うなんて……熱でもあるんじゃ……。」

「……他人に好き勝手に振り回される奴の気持ちが、やっとわかった気がするんじゃ………。」

「?」


20081224


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