短編
□風花
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「雪…」
風花と呼ばれるその雪は仲間たちのかつて生きた証
私たちは力を発揮する度に身体を構成している魔力を使う
そして魔力が尽きれば…雪となり消えるのだ
風に流されてきた雪の結晶に触れば私の体温で溶けて消えてしまう
消えると同時に彼が生きていた当時の記憶が入ってくる
彼女との初めてのデートだろうか、まだ初々しい二人がそっと手を繋いでいる風景
幸せだっただろう頃の記憶
きっと彼女と結婚して幸せな家庭を築いていたんだろう
だけど現実は残酷で…
私の一族は死ねば死体が残ることなく雪となる
「神さまなんて嫌いよ」
存在を信じたこともない神さまへの罵倒を祈りの変わりにして追悼する
私は彼の生き様を氷に彫り風に乗せる
私の仕事は雪の結晶をつくること
一つとして同じ形の雪はできない
だってそれは私たちが生きた精一杯の証と記憶が固まったものだから
そうやって今日も私は風花を見て祈り雪を作る
風花と雪職人