短編
□夜に嫌われた私
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夜に嫌われた私
人間の涙を飲んではいけない
白孤だった私はその掟を破った
その掟を破ったらどうなるかは知っていた
一部の能力を除いて能力が消えてしまうのだ
つまり能力を持った人間になってしまうのだ
ある日幼い子どもが夜に一人で泣いていた
夜は私たち、妖怪の世界あんな小さな子はすぐに食べられてしまう
私は狐の姿のまま幼い子の涙をなめ、服を引っ張って交番まで連れていった
そのまますぐに私は闇に消えた
しかし、涙を飲んだことに気づく
もう仲間の元には戻れない
夜に活動することもできない
もう人間として生きていくしかなかった
狐になれる人間として昼の世界、人間の世界で生きていく
それからは仕事をして人間の中で生きていっている
夜にはなるべく外出しない
狐に戻るのは家の中だけ
苦しい生活だけどしょうがない
掟を破った自分が悪いのだから
仲間に見つけられる訳にはいかないし
もう二度と夜の世界には戻れない
けれども完璧には昼の世界にいることができない
妖怪でもない、けれども人間でもない
そんな私はいったい何なんだろうか
(夜に嫌われた白孤はずっと自分の居場所を探す、ずっと自分とは何かと問い続ける)
end