短編
□仮装大会
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ハロウィンパーティーをやろう!
あのバカの一言で何故か俺の家でやる事になった。
「くそっ、何で俺の家でやるんだよ。バカの家でやれよ。」
家を片付けながらぼやく。
すると一緒に片付けをしてくれていた紅夜がごめんと謝ってきた。
「はぁ?なんで紅夜が謝るんの!」
「俺、最近仕事が上手くいかなくて精神的におかしくなってたら涼が僕がなんとかするから!って言ってくれたんだ。それで考えてくれたのが俺と涼と海都でハロウィンパーティーをやろうっていうことだったんだ…」
「どうせハロウィンパーティーという名の飲み会でしょ。だから涼はバカなんだから。」
「あの〜海都さん、口が笑ってますよ。」
笑いながら紅夜が言ってきた。
「うるさいなぁ。」
そう口ではバカだバカだと言ってるけどアイツの発想は俺には出来ないぐらい柔軟だ。
俺も紅夜が精神的にヤバいのはわかっていたが何も出来なかったのだ。
だけどアイツはいろいろな事を考えて俺らを楽しませてくれる。
学生の時から三人でつるんでるが俺が涼で遊んで涼が紅夜に助けを求めて、紅夜は笑いながら助ける。
だけど不安になった時、苦しい時にはいつも横にコイツらがいたからここまでやってこれたのだろう。
まぁ俺は素直じゃないから絶対にそんな事は言わないが。
そうやって話ながら片付けをして一段落ついた時にやっと涼が帰ってきた。
「ただいまー!」
「お前おせーよ!」
「まぁまぁ海都、で涼は何を買って来たんだ?」
「えっとねぇ、オヤツとお酒とご飯と仮装!」
「「仮装ー!?」」
「えっだってハロウィンといえば仮装でしょ?僕はねぇ魔女で紅夜は黒猫で海都は狼男ね。」
ルンルンで衣装を渡された。
そして、魔女(魔法使い?)と黒猫と狼男の不思議な宴会が始まった。
もうそっからはこれはハロウィンパーティーじゃなくて仮装大会だと思った。
衣装交換はするわ、女装はさせられるわでもういつもの飲み会と全く一緒だった。
まぁ紅夜がすっきりした顔だったから良しとしよう。
そういえば女装は紅夜が一番似合ってた。
本人は嫌がってたが。
後半になると何時ものように涼が寝てしまった。
涼に布団を掛けて二人で静かに飲んでいると紅夜が口を開いた。
「あのな、今会社で扱ってるプロジェクトが大詰めになってから問題が起こってどうなるかわかんなくて皆がピリピリしてるわけ。それでそんな空気にやられたんだよ。それに問題が俺たちのチームが扱ってた所かもしれないから余計にな。」
紅夜は何か背中に重い物を乗っけてるような表情をした。
「トリックオアトリート」
俺はふとそう言って手を出した。
「はぁ?」
「だから、トリックオアトリート」
ほいっ、と投げられたアメを横に置いて俺は続ける。
「こんなんじゃ足りないね、だからイタズラさせて貰うよ!ふふふ」
笑いながら紅夜に近づいて行くと怯えたように下がる。
酷いなぁ
そう思いながら思いっきりくすぐる。
紅夜はくすぐらると本人曰く死にそうになるぐらい笑うらしい。
「あんたねぇ、グチぐらいならいくらでも聞くからさ、一人で悩まないでよ。なんのために涼がこの仮装大会やったと思ってるのよ!」
「うん、ありがとう。」
「どーいたしまして、あのバカもバカなりにいろいろと考えてたみたいよ。」
「うん、涼にもちゃんとお礼を言わないとね。」
そう言って涼の頭を撫でた。
「ほらっ紅夜も飲むよ!酒だけはいっぱいあるんだから。」
何故か紅夜が消えてしまいそうに見えた。だから無理矢理ビールを押し付けた。
そのまま二人で宴会をやって何時に寝てしまったかは覚えてなかったが紅夜がすっきりした顔をしていたので良かったと思った。
後日俺と紅夜が話している時に涼が起きていた事が分かった。
そしてバカ呼びした事で大分文句を言われた。
end