access to ACCESS

□LOVE TRAIN 〜地球は廻り続ける〜
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『先生!ウツさん!』
スタジオの廊下を歩いていたら久しぶりに、懐かしい顔に出会った。accessを結成する前に、お世話になっていた、小室先生とウツさんだ。

小室先生は同性愛とか全然駄目なので、ヒロと僕の仲がかつて、どうであったかは、秘密。
ウツさんは、「女の子も可愛い男の子も愛せる体質」だと言っていて、そういう人の勘なのか、僕とヒロの仲を見破られてしまっていた。でも、逆にいい相談相手にもなってくれていた。

『お久しぶりです!!こんなトコロでお会いできるなんて。』
折角だからと、ロビーのベンチで、インスタントコーヒーを飲みながら談笑する。小室先生が、
『また、access再結成したみたいだね、上手くいってる?』
ビジネス上では上手くいってるけど、一度引き裂かれたプライベートの仲は・・・。
『あ、はい。やっぱり僕の音には、ヒロの声が最高なんです。』
柔らかく微笑んで答えた。
『心底、貴水くんの声にいれあげてるんだね、だいちゃん。』
と、先生。
『はい!!』
思わず大きい声で答えてしまった。
横でウツさんが、くすり、と意味深に笑った。
すると、先生が
『うちのウツが貴水くんに変な遊び教えてない?』
『ひでーな、てっちゃん!夜の街は男のロマンよ。』組んでいた足を、組み直す。ウツさんは、いちいち絵になる人だと思う。
『だ、大丈夫だと、思います・・・。』
では、ないんだけど。
沈黙に入ったあの日から、ヒロのプライベートは一切知らない。
僕も人並みに恋をし、恋人もいた。
あの時の恋愛感情は、一時の気の迷いと、お互い、触れずに居る。
『ウツもそうだけど、貴水くんも、そーとー好きそうだから。』
との先生の皮肉に、
『あ、あはは・・・』
と、空笑いしてしまった。そしたらウツさんが、
『かなり手当たり次第、可愛い女の子を喰いまくってるみたいだよ?』
と不敵の笑みを浮かべた。『なぁ〜んてね。』
と、曖昧な言葉を残した。
う、き、気になる・・・。
動揺を隠すように、
『今度また、先生のトコロ遊びにいっていいですか?色々教わりたいな、て思って。』
『アポとってきてくれるんなら、時間空けとくよ。』
『忙しい身なのにありがとうございます。』
ペコリ、とお辞儀した。
すると、ウツさんが、
『今度俺んちにも来いよ。おもしろい遊び教えてやるぜ。』
あ、ウツさんに誘われた。先生と居るほうが多かったから、どんな家やお話が出来るか、気になる。
『はい、喜んで。』
と二つ返事で了承した。
紙コップのコーヒーが空になる頃、そろそろ解散するか、というようになった。『先生、ウツさん、お体には気を付けて。』
『ああ。だいちゃんもaccess頑張って!!』
激励の言葉を残していってくれた。


スタジオに戻ると、いかにも二日酔い、という感じのヒロがテーブルに突っ伏していた。
昨日も夜遅くまで飲んでました、ってカンジだ。
どう対応していいか迷ってしまう。
僕もヒロの居ない七年間で彼女もいた。飲みに出掛けなかった訳でもない。
・・・プライベートまでは足を突っ込めない。
自販機からミネラルウォーターを2本買ってくると、気配を消してヒロに近付き、ボトルを首筋に当てる。
『うひゃあっ!!』
ヒロは、この世のものとは思えない声のトーンで、ばっと立ち上がった。
『あ!あ!だいちゃん・・・。』
『ヒロ、笑えるっ!今の声。なんか二日酔いっぽかったから。』
言いたいことを、ぐっと押さえて、笑いながらヒロにボトルを渡す。
『Thank you!だいちゃん。友達と飲みに行ったら、キャバ巡りになっちゃって。』
と、一気にミネラルを飲み干して、そう言った。
『・・・そう。』
僕はその一言しか、言葉が出なかった。
「ブースに戻るね」と、声を掛け、ミネラルを開けながら歩きだした。

それから15分も経たないうちか、安部ちゃんが、僕のブースに入ってきた。壁にもたれ掛かり、腕を組んで、
『アレ、どう思う?』
とヒロの居るほうへ顎をしゃくって、僕の目を見た。
『・・・・・・。』
僕が答えずにいると、
『access再結成してからも、ずっとあんな調子よ?やる気あるのかしら・・・。そりゃ、7年のブランクはあるけど、そんな問題じゃないと思うわ。』
『そうだね、安部ちゃん。僕からそれとなく注意しておく。』
安部ちゃんは、安心したのか、僕の肩を叩いて出ていった。

再びブースを出て、まだ突っ伏したままのヒロに、
『ちょっと、いいかな?』
とブースの方へと呼んだ。
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