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□『余命一年。』
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『ヒロユキさんの余命は、1年以内です。』


冷たい宣告に、背筋が凍る思いだった。


ヒロがスタジオ先で倒れたどのことで、仕事をすっほかし、直ぐ様病院へと、必死に車を走らせた。

病院の案内所でヒロの診察室を聞き、向かう。早足で。本当は走りたい位。

やっと辿り着いた。
二つの影か小さく消えそうに見える。こちらに気付いて、
ヒロのお母さまが、僕の手を握って、

『貴方が浅倉大介さんですね。うちのヒロユキの面倒を見てくださってた・・・』
『はい、浅倉です。こちらこそお世話になっています。』
両親は大体の話を聞いているのか、そわそわしてるよ様だ。


病気の宣告の時だ。両親と一緒に僕も、聞かせくれると言ってくれた。

先生は、まず、
『気を確かに聞いてくださいね。』
と言った。
皆の呼吸が止また。

『ヒロユキさんの、余命は、一年、です。』
みな息を飲んだ。
両親は抱き合って泣いている。
いつも明るくて、いたずらっ子で、その場を馴染ませてくれる、二日酔い以外いつも元気で、そんなヒロが、なんで・・・!?
「・・・ずるいよ、神様・・・」

先生が次の言う。
『タカヒロさんの病名は、「再生不良性貧血」といいます。』
いわゆる、血液の癌だ。幾千人に一人の型があう骨髄を、移植しないと助かる見込みは無い・・・。合ったとしても拒絶反応がでたり、合併症が酷く、亡くなる方も居るそうだ。

目の前が真っ暗。
骨髄は、両親や兄弟なら、型が合致する事が多い。
僕みたいな普通の人なら、とてつもなく可能性が低い。
家族のタイプと当てはまるといいのだけど・・・。

診察室をふらふらとでて、ご両親に断りを得て、お手洗いに入り個室に腰を掛けた。
涙が溢れてくる。声を出さないよう、ハンカチを口に噛み込み、必死に耐えた。それでも涙は溢れて来る。
もう、ヒロと音楽が出来なくなるの?

もう、ヒロと一緒にお出かけ出来ないの?

もう、・・・「大好きだよ。」って言ってくれないの?
もう、テレながら「愛してる」ってキスしてくれないの?

もう、そんな贅沢言わないから、せめて一緒にヒロの声のバックで弾かせて。

一通り、泣いて、お手洗いから出たとき、安部ちゃんに会った。
『大介、あなた、泣いたのね・・・そんなにひどいの?』
僕は口を開いたら泣き出しそうで、唇をぎゅって噛んで、大きく頭を縦に振るしか、できなかった。
安部ちゃんはそんな僕の隣で、僕が落ち着いてくるまでまってくれる。

一時間は経ったであろうか、心が落ち着いて話せるようになった。
『安部ちゃん、心して聞いてね?』
『解っているわ、泣いてたからね、大介』
『・・・ヒロね。』
『うん。』
『ヒロ、余命一年の、血液の癌だって。』
流石の安部マネは息をのみ、溜息を吐いた。
『それって、骨髄移植しないといけないんでしょ?』安部ちゃんも、はっと息ををのむ。
『そうなの。家族間なら、確率は高いといわれてるけど・・・。』
『どっちみち賭けみたいなものだわね。』
『お父様たちは今骨髄をとっているのしら。』
また、涙が溢れだし
『ねぇ、安部ちゃん・・・何で僕じゃ無かったんだろ!』
胸が苦しくて苦しくて堪らない。
スパーンと頬を叩かれた。今にも泣きそうなマネージャーの顔を見た。
『冷静になりなさい、大介。今は頭を冷やさないと。』
こくんと、首を下げ、
『そうだよね。』
と、頼りなく笑った。
『今日から無期限のオフにするわ。まずはお家で休むなりして、落ち着いてから会いにいったら?』
安部マネも辛そうにしている。
『そろそろ帰る?』
『・・・そうだね、ヒロのご両親に挨拶してくるね。』

数分して戻ってきた。
また、現実に引き戻されてきたようだ。
外へと向かう廊下が長く感じる。
安部マネは僕の肩を叩いてきた。
僕も、もう大丈夫だよ、と笑ってみせた。

それからそれぞれの、帰途へと着いた。
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