access to ACCESS

□翳りゆく部屋
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それは、突然のコトだった。

午後過ぎに、ヒロからメールがあった。いつものことだからウキウキしながら、メールを開く。
『夕方、だいちゃん家、いっていい?話したい事があるんだ。』
妙に真剣そうなメールだった。
その日は深夜まで仕事のある日だった。
『今日、僕、深夜まで仕事があるんだ・・・。』
と返事をする。
『そこを、なんとかお願い・・・。我儘なのはわかってる。』
ヒロは仕事に関しては、滅多我儘は言わない。何かあるのだろうか、ヒロの約束を優先させるよう、アベちゃんに何度も頼み込んだ。
根負けした、アベちゃんは「今回だけよ、あんたソロになったら今以上忙しくなるんだから!」と言って、許してくれた。
ヒロに
『6時ごろ着くように、するね。スペアキーで中に入ってて。』
とメールした。
ヒロからは、
『うん、わかった。』との、シンプルな返事だった。

仕事を一通り終えて、タクシーで家を目指す。
自分のマンションの部屋に着いた。
もう、中にいるのは知ってるから、チャイムを鳴らさずに入っていく。

そこには、いつもと違う雰囲気でヒロが座ってた。

元気なさそう・・・。
後ろから
『ヒロ、ただいま!!』
っと、肩を抱き締めた。
間髪入れずに、振りほどかれる・・・。え?どうして?

『だいちゃん、ゴメン・・・』
それは振りほどいた事なのか、それとも別の事なのか区別がつかなく、床に足を投げ出し、右手で体を支える形になった。

『浅倉さん、ごめんなさい。』
名字で呼ぶ。何にごめんなさいか、解らない。
『一番大好きな、だいちゃんだから、一番先に言うね。』
ごくり、と喉を鳴らした。
『浅倉さん、「ソロ」という形出はなくて、オレは「access卒業」と言うことにしてくれないかい?』

言ってる意味が解らない。いや、解りたくない!

ヒロは、別れの気配を漂わせながら、こちらを振り向かない。

『どうして!!』
ぽたぽたと、涙で、叫ぶ。

ヒロの肩も震えてる。
『「ソロ」じゃダメなんだ!「accessがある」って思ったり、思われるんだ』

ヒロの後ろ姿が夕闇に照らされて遠く感じる。

『自分のチカラで試してみたいんだ!』

椅子から立ち上がり、僕を抱き上げると、耳元で、
『さよなら、最愛のだいちゃん。』
そっとくちびるにキスをしてきた。

泣きじゃくる僕を置いて、ヒロはドアを閉めた。


僕はそんなにもヒロを追い詰めていたのか・・・?
関係を失うほどに・・・。
マンションの壁に耳を当ててヒロの靴音を追い掛けた。

もう、最期なの?ヒロ・・・。
どんな運命が二人を遠ざけたの?


その日一晩中、僕は泣き続けた・・・・・・。







だいちゃん、眠りながら泣いてるの?』
隣には最愛の人がいる。涙を拭きながら、優しくキスをしてくれる人。
『・・・ごめん、また、あの時の夢見ちゃって・・・。』
僕を腕枕したまま抱き締めてくれるヒロ。いつも申し訳なさそうな顔をするけど、
『もう、絶対だいちゃんを離したりしないから。最愛の人だから。』
そうしておでこにキスして、くちびるにもキスしてきた。甘い甘いとろける様なキス。


長い困難を乗り越えてきたから、今こんなに幸せで、そのありがたさが解るんだね。


僕は、貴水博之を、愛してます。


*********
あとがき
タイトル、ユーミン・荒井由美最後の歌ですね。あたしも大好きな林檎ちゃんもカバーしてます。
ちゃんと、ハッピーエンドで終わらせるつもりでしたので、最初のイメージのは暗いものにしよう思いました。
まあいつまでたっても、やっぱりバカップルってことで(笑)

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