access to ACCESS

□ON SIDED LOVE  〜HIRO SIDE〜
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accessが沈黙に入って数ヶ月が経った。オレの我儘で大ちゃん他ファンたちを、悲しい想いをさせる決断をする事になる。

「貴水博之access卒業宣言」

ソロで始めていくなら、オレは不器用だし、1人でやっていくには、もう独り立ちしていく方がよかった。

ひとづてに、大ちゃんがみんなの前には気丈に振る舞っているけど、防音室にこもり泣いている姿をみかけたことがあると聞いていた。

オレのハイトーンヴォイスを一番活かしてくれる大ちゃんのシンセサイザーの音。二人で居るだけで刺激しあえる仲だった。


「この先、他に誰にも、オレはユニットを組むことはない・・・」

オレはもうaccessをやっているトキから、大ちゃんかへの感情が変化しているのに気が付いていた。

「アーティストとしての尊敬」はもちろん「恋愛対象としての愛」に変わっていたことを・・・。

大ちゃんは様々なメディアで否定してきた。この、叶わぬ恋、胸が引き裂かれるような痛みを味わってきた。

だいちゃんだって、女の子にモテるし、もちろんオレと同じ感情を持ってる筈ない。


『はい!リハーサル入りまーす!!』
今日は生放送で、悲しんでいるあの人に送る歌を歌う。
accessを離れたオレから、あの歌を歌うことでしか、気持ちの伝えようがなかった。


リハが終わり、本番の服に着替えて待つ。
accessのときより随分変わったオレは、あの人にどう映るんだろう。

取り敢えず、大ちゃんには見てほしいから、携帯から『大ちゃん』の文字を出して電話をする。七回目のコールでつながる。
『もしもし・・・』
心なしか元気のない大ちゃんの声。そんな気分を晴らしてあげたくて、
『久しぶり〜!元気にしてた?』
とオレは言った。
『うん、まぁ、大丈夫。』
大丈夫じゃ、なさそう・・・。
伝えたいことを言葉にする。
『大ちゃん、今日オレテレビにでるんだよ。』
『へー、よかったね・・・』
まだまだ落ち込んでるみたい。自分の我儘に後悔すら覚えてきた。
でも大ちゃんには発の新曲聴いてもらいたくて
『それで、絶対大ちゃんに見て欲しくって「I&I」って歌。大ちゃんの為に作った歌だから。』
『解った。仕事早めに切り上げて見るよ。』
少し声が明るくなってきたかな?
『約束だよ?』
『うん、約束!』
じゃあね、の言葉を残し通話が途切れた。

大ちゃんも仕事あるだろうに無理を言ってしまったかな?
でも、大ちゃんに見てもらって初めて「生きる歌」なんだ。

一通りインタビューを受けた後、独りステージに入る。
低めの声で心を込めて歌う。


♪どこにいても 君だけは 涙を流さぬように いつの日も そう願ってる♪

♪どこにいても 君だけは 笑顔でいられるように いつの日も そう願ってる♪


『だ・い・ち・ゃ・ん』
声にはならない呟きで、大ちゃんを呼んだ。

気付くかな?
気持ち悪く思われちゃうかな?


番組が終わり、帰ろうとしたトキ、大ちゃんの家まで行ってみようと思った。

タクシーを拾い、大ちゃん家を訪れてみる。
ライトがついてない。取り敢えず玄関のドアノブを引っ張ってみるが、開かない。
仕事断れなかったのかな?、と落ち込んで、自宅へ向かった。

マンションに到着すると、誰かの影がある。近づいてみると、眠そうな大ちゃんだった。背中がちいちゃく見えて直ぐに駆け足で近寄る。
『どうしたの?だいちゃん。こんなところで・・・』
『どうしたもこうしたもないよ・・・あんな映像見せられて・・・』
オレの胸を大ちゃんが何度も叩く。大ちゃんが感じていた切なさが伝わってきた。

『取り敢えず、中に入ろ。大ちゃん。』
もしかしたら・・・。
もしかしたら、大ちゃんも同じ気持ちで居るのかもしれない・・・?

部屋に入った途端大ちゃんは、はらはらと涙があふれ出ている。
『あんなの、見せられて、普通じゃいられない・・・。』
『え。ど、どうして・・・』
オロオロしているオレ。何て格好わるいんだ。
すると大ちゃんが意を決したように口を開いた。
『やっとボクは気付いたんだ。』
大ちゃんがオレの胸のなかに飛び込む。
『気持ち悪いと思われるかも知れないケド、ボクはヒロが好き。恋愛として好き・・・。』
え、本当に・・・?オレは大ちゃんの告白に面食らった。本当ならオレが先に言いたかった言葉。
次の瞬間、オレはめいいっぱいの愛情を込めて大ちゃんのカラダを抱き締めた。
『気持ち悪い訳ないじゃない。オレこそ怖かった。』
オレは大ちゃんの顎を指で持ち上げ、そっとキスをした。
あの歌の様に涙を流させないよう、笑顔で居てくれるように、
『大好きだよ。オレを信じて。』
大ちゃんはこくん、と笑顔でうなづいた。

『2人とも、両想いだったんだ。取り越し苦労だったみたい。』


2人で、笑いあった。

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