*BLOG'S UP NOVEL*
□腐男子彼氏
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それは、昔。
まことしやかに、流れた噂。
『accessが夏コミに来るんだって〜!!』
結局は、現われることは無かったんだけど。
これは、その裏話。
* * *
「ねぇねぇねぇ〜!安部ちゃん!安部ちゃん!!安部ちゃーん!!!」
accessはセカンドツアーの真っ最中。うだる様な夏の暑さ。舞台のセッティングを待つ浅倉大介は、マネージャーの安部女史を呼んだ。
「はいはい。何回も呼ばなくても聞こえてるわよ。で、何?大介。」
安部女史は大介に近付く。…………あら、大介がこんな顔をする時は、仕事場を抜け出して何処かへ行きたい時だわ。
「安部ちゃんさぁ〜。僕、夏コミ行きたいんだけど!!」
ウキウキ顔で返事をする大介。
「………『なつこみ』……?」
突然の話で理解不能な、安部女史。『なつこみ』って、何よ??
「うん、『夏コミ』!!」
それはそれは楽しそうな顔をする大介。
安部女史は悪い予感がした。
「舞台のセッティングが終わるまで、暇でしょ?」
と大介は言った。
「まぁ………暇といったら暇だけど………。」
何時もなら、シンセサイザーの音を入念にチェックする大介。そんな大介が、手持ちぶさたでソワソワしている。
「ヒロも一緒に連れて行きたいんだけどさ〜?」
どんどん話を進めていく大介。
「まだ、いいって言ってないわよ?ていうか、『なつこみ』って何なのよ?」
安部女史は『夏コミ』の存在をしらない。勿論、『コミケ』『同人即売会』なんて言葉も。かろうじて知っているのは『同人誌』の存在。
何故、『同人誌』の存在を知っているのかと言えば、毎日の様に事務所に沢山の『同人誌』が送られてくるからだ。
以前、大介がその『同人誌』を呼んでから、大のお気に入りとなってしまった。安部自身やパートナーの貴水博之、果てはスタッフにまで見せびらかす始末。
「『夏コミ』って言うのはねっ!!『同人誌』を販売したり、コスプレした人がうろうろしてるトコロ!!」
実に楽しそうである。
「ちょ………あんた!!何考えてるの!!」
安部女史は、怒り心頭である。今ではaccessの同人誌全盛期である。そんな所へ行かせるなんて絶対に出来る訳が無い!!!
「ばーーーかーーー!バカか、あんたは!!そんな所に行ったら直ぐバレるし、むしられるわよ!!!」
大声で怒鳴る安部女史。余りの迫力に、まわりのスタッフが手を止めて、訝しげにこちらを見ている。
「安部ちゃん、大声出すから、みんな見てるよ?」
と、呑気に言う大介。その言葉で、安部女史に火に油を注ぐ。
「バカか、大介!そんなトコロ、行かせれる訳ないじゃない!!」
安部女史は、小声にはなったものの、怒りはおさまらない。
「気になる作家さん達が、新刊出すんだよね〜☆早く見たいじゃん?」
安部女史の言葉を無視して続ける大介。
安部女史と言えば、拳を握り怒りでわなわなと震えている。
「我慢なさい!!」
おもちゃを欲しがる子供を叱るように、大介に言う。
それでも、大介はへこたれた素振りも見せずに、
「じゃあさぁ〜、ヒロが一緒に行くって言ったら行ってもいい?」
と聞いてきた。
博之が行くなら?………博之は大介が見せびらかしていた『同人誌』には、一切興味を持たなかった。
安部女史は、博之は断ると踏んだ。
「………いいわよ。博之が行きたいって言ったら一緒に行ってきなさい。」
と大介にむかって言った。
すると大介は少し離れた所で煙草を吸っていた、博之に声をかけた。
「ねぇ〜ヒロぉ!!『夏コミ』一緒に行こうよー??」
大介の声に反応して、博之は答えた。
「いいよ〜!オレ、大ちゃんが行くところなら何処でもついてくよー!!」
安部女史は、その返事を聞いて青ざめた。そういえば、博之は何時もバカップルの様に、大介の後ろをついていくのだった………。
安部の負けである。
「やったー!じゃあ、ヒロと一緒に行ってくるね!!」
安部女史は、頭がクラクラとした。
「………はい……いってらっしゃい………。」
ガクリと肩を落とす安部女史。
「あ!ついでに、ライヴの衣裳も借りてくねー☆」
キメのライヴの衣裳を紙袋に詰め込み、るんるんとスキップしながら安部女史の横を通り過ぎる大介。
「ちょっ!待ちなさい、大介!!衣裳なんかどうするつもり!?」
手で頭を押さえる安部女史。大介の返事といえば―――――
「向こうでコスプレするんだよ☆」
安部女史は、もう、何も言葉に出来なかった。安部女史が最後に聞いた言葉は………
「ねぇねぇ、大ちゃん。『なつこみ』ってなぁに?」
と大介に尋ねる博之の声だった。
その日の夏コミには、とてもクオリティの高い男性二人のaccessのコスプレイヤーが現れ、同人誌を大人買いしていく姿が、伝説となったとか、ならないとか………。
《おわり》
*あとがき*
これは、以前、マイミクさんと、電話で話した内容と、初期の頃、「accessが夏コミに現われるらしい!!」と言うかなり笑える噂があったことを元に生まれました。
何かシリアスを書いている反動で、おバカな作品も増えてる気がする月影www
何故ヒロが同人誌に興味を持たなかったのか………それは、○△×………と言う事で(笑)