*BLOG'S UP NOVEL*
□『赤い悪夢』〜HT Re-SYNC STYLE〜
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暗闇の中、ヒロの瞳がギラリ、と光る。
―――――お願い、悪い夢なら、醒めて―――――。
「…………大ちゃん、お願い、オレだけの大ちゃんになって………?」
灯りが消された、暗い部屋の中で、ヒロの目と、握られたナイフだけが光る。
壁際まで追い詰められた僕。逃げ場は無い。
太陽のように明るい貴方が、今、まるで宵闇に光る月の様に妖しく揺らいでいる。
シュッ、っという音とともに、頬に鋭い痛みが走る。
手のひらで触れてみると、ヌルリ、とした感触。
「ヒロっ!!目を覚ましてっ!!!」
力の限り叫ぶ。今は闇を孕んだ色素の薄い瞳。
また太陽の光のように僕に微笑みかけて欲しくて、必死に叫ぶ。
「誰かに微笑む大ちゃんが、キライ。誰かに優しくする大ちゃんがキライ。オレが居なくても平気な大ちゃんが………大キライ………!!」
狂気を孕んだヒロの叫び声。
ヒロをこんなに追い詰めたのは、僕の所為(せい)。 ごめんね。
本当は嫉妬(やきもち)やきのヒロを、素直になれない僕がいつも惑わせていた。
「ごめん………ヒロ。……こんなに追い詰めたのは僕の所為だね……。」
今更謝ったところで、元に戻る訳でもない。
それならば、いっそ、ヒロの望み通りに、ヒロのものに、………ヒロだけのものになろう。
「大ちゃん………お願い。オレだけの大ちゃんになって………!!」
暗闇の中、妖しく光るナイフと共に僕へと駆け寄るヒロ。
―――――僕が貴方の手で、貴方だけのものになるのなら、本望、です。
僕は、ぎゅっと、目を閉じた。
「!!」
ドスン、という衝撃。
ヒロを思い切り抱き締める。
腹部に鈍痛を感じる。ドクン、ドクン、と体の中のものが流れだす感触。
「…………!?」
声もたてずに、僕はヒロの胸の中に崩折(くずお)れた。
「………泣いて………いるの?……ヒロ……。」
その瞳からは狂気の乱火は消えていた。
ぶるぶると震える血で濡れた手でヒロの頬を包む。ヒロは、何か怖い夢を見た子供の様にガタガタと震えている。
………可愛そうな、ヒロ。
僕達は何処で、お互いの愛し方を間違えたのだろう?
「愛………してる、……大ちゃん……。なのに………ごめん…ね?」
「………僕は……永遠に……ヒロ…の…もの、だ……よ?」
………本当に、可哀想な、ヒロ。
「泣か……ないで………。」
僕の血糊で赤く染まったヒロの頬を伝うのは、赤い血の涙。
ヒロの事を責められないよいよ?馬鹿げてるなんて言えないよ?僕は、ヒロなら解ってくれるって、自分勝手に思っていたんだから。
「………ぼくは、しあわ…せ、だ、よ?………もう、責め……ない…で?」
息が苦しい。もう声が出せない。力も入らない。
ヒロの腕の中で。
最後に見たのは、
僕の体に突き立てられたナイフを引き抜くヒロの姿。傷口から溢れだす、僕の血を浴びて赤く染まるヒロの姿。
最後に聞いたのは、
ただ、愛してると繰り返すヒロの声。
意識が、遠くなる―――――。
最後に感じたのは、ドスン、と倒れこんだ、ヒロの体温。
僕は、泣いた。
ヒロは、僕を独りぼっちにはしないんだね。
嬉しいよ。
一緒に逝きていけるなんて。
僕達が逝く末は。
―――――天国?
それとも。
―――――地獄?
ヒロが一緒なら、どこでもいいや。
ごめんね。
もう、眠くなってきちゃった。目を閉じても、いいかな?
どれほど、時が経ったのか。
僕は、病院のベッドで目覚めた。
ぼんやりとした視界に映るのは、僕が大好きな人たちばかり。
でも、一番愛しいヒロの姿だけ見えないよ。
おかしいな。
ねぇ?
どこに居るの?
―――――悪い夢なら。
どうか、醒めて?
赤い悪夢。
貴方に。
永遠の愛を、誓います。
《了》
*あとがき*
ヒロと大ちゃんの、狂気の愛、の違いを感じて頂けましたでしょうか?
こちらも当初、R-18指定でパス付きで公開していた小説になります。
狂気に狂喜゚+。(*′∇`)。+゚的な愛に、萌えていた頃(今も続いてます・笑)の作品です。
感想など頂けると、とても嬉しいです。
月影咲夜 拝