*BLOG'S UP NOVEL*

□涙の続き
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涙の続きが

はらはら 止まらない

貴方を 愛してる………



 ヒロと別れて、七年の月日が過ぎた。
 それぞれのソロ活動をして、accessは昔の存在となって。
 ヒロから別離(わかれ)を告げられたあの日、僕は貴方の前では決して泣かなかった。それは、ヒロの旅立ちの門出だから。せめて、笑顔で見送ってあげたくて。
 ヒロは、真っ直ぐな人だから。accessという存在を残したまま、器用に活動することは難しいんだろうなって思ってた。だから、別離の言葉を聞いた時、来るべき時が来たんだって思った。
 でも、僕は。
 あれから何度も涙を流した。泣いて、泣いて、目が赤くなる程泣いて。声が枯れる程泣いて。泣き疲れる程泣いて。
 でも、涙は枯れることは、決して無くって。
 僕は、ソロ活動に没頭した。忙しくしていないと、直ぐにでもまた泣いてしまいそうで。そして何時しか、悲しいかな人間の性(ひとのさが)で、あの日の痛みも涙も忘れる時が来て。
 僕は、強くなった。ヒロと一緒に居た時は、よく泣いていた。悲しいときも、嬉しいときも。でも僕は、想い出と一緒に涙も忘れ去った。

「………ケ………ダ……スケ!……大介!!」
 安部ちゃんの声で、我に返る。
「………何?」
「大介、さっきからボーッとしてるけど、大丈夫?」
 怪訝そうな顔をして、運転席の安部ちゃんが僕の顔を覗き込んだ。移動中の首都高は、渋滞している。
「ん。大丈夫だよ?ちょっと考え事をしていただけ………。」
「………ならいいけど………。しかめっ面をしていたから、何かあったのかと思って。」
「無い無い!!安心して。」
 僕は、笑ってみせた。
 ………しかめっ面なんか、してたのか………。考え事をする時は、気を付けよう。安部ちゃんに無駄な心配をかけてしまう。
 まだ、首都高は渋滞をしている。少し進んではまた停まって、の繰り返し。
 予定の時間よりかなり早めに出たから遅刻することは無いと思うけど。
 僕が物思いに耽っていたからか、安部ちゃんは溜め息を一つ吐くと、気分転換にカーラジオをつけた。

―――――そこから流れてきたのは。

 あの日の、二人の、ラブソング―――――。

 安部ちゃんは気を効かせたのか、他の番組に変えようとする。
「待って!久しぶりに聴いていたい………、」
 僕の言葉に、手を引っ込めてハンドルを握り直した。
 5分のタイムマシン。
 いつも、隣にヒロが居た。ヒロの肩にもたれて、ヒロが僕の為にアカペラで歌ってくれていたラブソング。
 ヒロと別れてからしばらくして、ヒロが夜の街を彷徨(さまよ)う様に毎日遊び歩いてると噂に聞いた。
 そして女の子との噂も。付き合っては暫らくして別れ、そしてまた別の女の子と付き合っては別れ………。
 元々、ヒロは女の子が大好きだ。覚悟はしていたけど………悲しくなかったと言ったら、嘘になる。
『ずっと、愛してるよ。』
って、誓いの言葉をくれたけれども、時は移ろいゆく物。それに縋(すが)って生きていく程、僕は子供でもない。
 それはそれと、割り切っていた。誓ったその時の心に偽りは無かったから。
 カーラジオは、ヒロの想いが詰まったサビの部分を告げる。
 想い出す。
 確かに、愛されていた、あの頃。
 二人の仲が引き裂かれる前のあの日々。
 目の前の幸せが消えてしまうなんて、少しも考えていなかった時。
 懐かしさに、涙が溢れてくる。忘れかけていたあの日々が鮮やかに蘇る。
 僕は久々に泣いた。はらはら、涙は止まらない。
 ヒロも、何処かで僕を想い出してくれることがあるのだろうか?今でも、少しだけでも。
「………大介、大丈夫………?」
 隣の安部ちゃんが、僕の肩に手を置き、心配そうに聞いてきた。
 僕は、決心をした。
 涙を手のひらで拭う。
「………安部ちゃん、僕、決めた。」
「………何を、決めたの?」
 安部ちゃんが僕に問い掛ける。
「ヒロに………逢いに行く。もう一度、ヒロと一緒にaccessをやる為に。」
 僕は決意を言葉にした。驚く安部ちゃんの顔。
「大介………。」
 とても心配そうな顔をされた。でも。
「………大丈夫だよ。同じ間違いは、二度と繰り返さない。例え、ヒロに断られても………必ず復活させる。」
 そう言葉にしたら、自然に笑顔になった。
「………大介、分かったわ。頑張りなさい!!私も協力するから。」
 こういう時の安部ちゃんは、とても頼もしい。
 渋滞も解消し始めて、徐々に車が動きだす。

 待っててね、ヒロ。
 必ず、逢いに行くから。

 そして。
 もう一度。

 僕を信じて―――――。


       《了》


*あとがき*

また、二時間程で仕上げてしまいました(笑)

月影は、割と直ぐにお話のネタが浮かびます。気分が乗っているうちに書き始めれば、早くて数時間、遅くても1日くらいで、書き上げてしまいます。お話の長さにもよりますが………。
カーラジオから流れる曲は、読まれた方それぞれの解釈で読んでくださいね☆

 ちなみに、カーラジオから流れる曲は、月影の中では、決まってはいます。2つ程あるんですが………ひとつはシングル、もうひとつは某アルバムの曲です。月影的には某アルバムの曲がいいのですが、現実的に流れるとしたらシングルの方かなと………(;^_^A

 シングル、もしくは某アルバムの曲が、何か解った人はよろしければ、『GIVE ME ACCESS(MAIL)』から、ご一報下さいませ(笑)

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