*BLOG'S UP NOVEL*

□Fallen Angel
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貴方は 今 笑ってる

貴方は 今 悲しんでる

貴方は 今 怒ってる

貴方は 今 僕に愛の言葉を囁いてる

でも

その顔は?

その心は?

その言葉は?

『真実』?それとも『偽り』?

僕は迷う。

貴方の『本当』は、何処にあるの?

  * * *

 大介は、ドラマの収録が押している、という連絡があった博之を、何とも暗い顔で待っていた。
 急遽ドラマの配役が決まった博之と逢うのは、久しぶりである。
 大介はaccess20周年イベントが沢山ある今年だから、accessを始めたての頃の様にもっと逢える様になるのかと思っていた。しかし思う様に逢えず、とても落胆していた。
 秋に博之が主役を演じていた、『銀英伝』のオーベルシュタイン役が、とてもはまり役で、絶賛されていた。その影響もあるだろう。
「おっはよー!!大ちゃん☆」
 博行は、何時ものハイテンションの高い声で、博之を待っていた大介の背中に抱きついてきた。
「お…おはよ………。って言うかスタッフに見られちゃうよ………。」
 と大介は何時ものことながら、照れて戸惑う。
「別に構わないじゃん。」
 悪怯れる様子もなく、博行は大介の頬にキスをした。
「オレは悪い事だと思ってないから。」
 無邪気に笑う博之。しかし、体裁を気にする大介は気になる。というか、大介は最近、博之が言う言葉や行動にいつも何故だか戸惑う様になっていた。
 何故ならばここのところ、博之が舞台やドラマで演じる役が、絶賛を受ける様になっていたからだ。
 博之が大介に向ける笑顔や愛の言葉に嘘偽りはない。ないはずなのに………。大介は妙な勘繰りをする。解っては居るけれど、どうしても信じられなくなっていた。
 博之の演じる役がとても上手いからだ。自分と逢う時も演じているんじゃないかと、変な想像をしてしまう。
 役を演じている博之はとても素敵だ。最近特に、以前よりも男前になったと感じる。それは、自分の仕事が認められたという自信がついたからに違いない。
 しかし、大介はそれが怖かった。何時も一緒に音楽をやっていた博之が、まるで、自分が知らない遠い存在になってしまう様で。役に染まって、他の誰かと恋に堕ちたりしないかとも心配になる。そして、それを隠すために、大介の前でも演技をするのではないかと。
「大ちゃん、どうしたの?」
 博之は何時もと変わらぬ太陽の微笑みで大介に微笑んだ。
「……う、うん。ちょっと考え事してただけ……。大丈夫だよ?」
 大介は慌てて微笑みを作る。疑っているなんて、嫉妬しているなんて、言える訳が無い。理性が邪魔をする。大介は博之ほど率直に物事を言える程素直な人間ではなかった。
「『大丈夫』って顔じゃ、無かったけど?ホントに大丈夫?」
 博之の鋭い突っ込み。最近、他人(ひと)の表情を読み取るのも上手くなった様だ。図星を指され、大介の偽りの笑みが剥がれ落ちる。大介自身、それが、よく解り動揺した。
「やっぱり、大丈夫じゃないよね?………ちょっと席を外そうよ。」
 博之はそう言い、大介の腕を掴んだ。
「……やっ……!!」
 大介は無意識に抵抗し、腕を振り払おうとする。
「やっぱり、変、大ちゃん………。休憩室行こうよ。―――安部ちゃーん!ちょっと、大ちゃん借りるよー!!」
 と安部女史に向かい、博之は大声で言った。安部女史は、
「解ったわー!!取り敢えず打ち合せ前までに戻ってきてよ!!」
 と返事を返した。博之は、今度は大介の手を握り休憩室へ行こうと促す。しぶしぶながら、大介は博之と手を繋いで歩きだした。
 休憩室とは、大介がいつ曲が思い浮かんでもいいようにと器材を持ち込んでいる部屋だ。煙草を吸う時もそこを使っている。言うならば、大介のプライベートルームの様なものだ。
 階段を上がり、休憩室の前に来ると、博之がドアを開けて中へ入るように促す。大介は俯(うつむ)いたまま、中へと入った。その後、博之も中へ入り、内側から鍵をかけた。立ったままの大介に博之は、
「まず、座ろうよ。」
 と、肩に手を置いてソファに座るように促す。言われるがまま、ソファに腰掛ける大介。その隣に博之も腰掛ける。
「大ちゃん、どうしたの?ちゃんと言葉にしてくれないと解らないよ、オレ。」
 責めるのではなく、優しい口調の博之。本当に裏表無く接する博之。なのに自分は―――――と、大介は胸が苦しくなる。
「………ごめんね、……ごめんなさい、ヒロ………。」
「謝らなくて、大丈夫だから。オレ、何かしたかな?大ちゃんの様子がおかしいのはオレの所為?」
 こんな時にでも博之は優しい。でも、他の誰にでも平等に優しい博之。そのことを知っているから―――――大介は変な勘繰りもするし、嫉妬もする。
「………ヒロの所為じゃない………。僕の心が狭いんだ。ヒロの俳優の仕事が入るのが………とてもイヤって思っちゃう。綺麗な女の人も居るし、誰にでもヒロは優しいし、ヒロはどんどん格好よくなっていくし………。」
 思いが、堰を切って言葉になり溢れだした。
 その言葉に、泣きそうな大介とは対称的に、博之は嬉しそうに微笑んでいた。
 博之は呟いた。
「………それって、『嫉妬(やきもち)』だって、思ってもいいのかな………?」
 大介はこんな時にでも余裕な博之にまた、嫉妬を覚えた。
「……ちがっ………!!」
 そう言い掛けた大介の口唇を、博之の口唇が塞いだ。

―――――この、キスは、本物?

 口唇が離れた時、博之はこう言った。
「オレが好きなのは、愛してるのは、大ちゃん。他の誰もキミには勝てないよ?それに、オレは大ちゃんだけに優しいつもりでいたんだけど。」
 照れ臭そうに笑う博之。嘘を付いてるとも、演技をしているとも感じられない。
「………信じても、いいの………?」
 消え入りそうな小さな声で聞く大介。
「信じて。信じてよ、大ちゃん。オレはプライベートまで演じられる程、器用じゃないよ?」
 言われる通りである。冷静になって考えてみれば、博之は真直(まっす)ぐな人柄だ。
 大介は、意を決して、博之の口唇に接吻(くちづ)けた。博之の愛を味わう様な甘いキス。舌を絡め合い、口腔を乱す。
 息が苦しくなり、やっと口唇を離す。
「………大ちゃんが、嫉妬(やきもち)を妬いてくれて、嬉しかった。オレが、急に忙しくなって、中々逢えなくなっちゃったから、尚更。」
 その言葉に、大介は、自分の考えが、取り越し苦労だったと、実感した。
 博之の心も、晴れ晴れとしていた。愛しい存在が、少し我儘な態度でも、自分の為に、嫉妬(やきもち)を妬いてくれていて。
 そして、少し反省もしていた。
 忙しいとはいえ、こんなにも不安にさせてしまった事。
 忙しさにかまけずに、もっともっと逢う時間を作って逢いに行けばよかった事。
 心を通じさせる為に、しっかりと話をすればよかった事。

 何故なら。

 愛しい彼は、少し天の邪鬼な、可愛い堕天使なのだから。

      《了》

*あとがき*

テレビドラマに出演すると、綺麗な女優さんもいっぱいいるので心配になります(笑)

大ちゃんもやきもきしちゃったんじゃないかな?

それに俳優さんって、役作りもあるし、演技じゃないかなぁって心配する部分もあると思うんです。

でも、ヒロは嘘とか下手そうだし、とてもいいひと(^-^)←コレ、だし、そこまで器用じゃないんじゃないかな?と思います。

大ちゃんの杞憂ですんで、よかったね☆

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