*BLOG'S UP NOVEL*

□BUTTERFLY KISS
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「んん………まぶし……っ」
 カーテンの隙間から零れる、冬の日差しの眩しさに目を覚ます。
 昨日は、お互いの劣情をぶつけ合うかの様に、抱き合った。それはそれは甘い蜂蜜の様に濃密な時間。
 揺れるカーテンの間から漏れる月灯りは、僕達を蒼く照らし出し、より煽情的な気分を高めて求め合った。
 そして、ヒロの執拗なキスの嵐で、僕の肢体に紅い花弁(はなびら)を残し、お互い抱き疲れて、泥の様に、深く眠った。

「………我ながら、照れちゃうくらい、凄いキスマーク………。」
 ヒロとはもう、何も言わなくても気持ちが通じ合う程、長い年月を一緒に過ごしているのに、最近気付いたことがある。
 実は、ヒロは意外と、独占欲が強いということ。
 それは、2人が出逢ってこんな関係になりはじめた時は気付かなかった。まだヒロが遊びたい盛りの若い頃だっていうのもあったんだとも思う。誰が一人に、束縛されたくないっていうことも。
 でも、こうして肌を重ねるごとに、ヒロは、必ずキスマークを残す様になっていった。
 それは年を追う毎に、強くなっていった。口では決して言わないけど、無言の接吻(くちづけ)の束縛の鎖。

…………まぁ、それが僕にとっては、嬉しかったりするんだけど。
 と、僕の肌に散らされた花弁を指で辿りながら、くすり、と笑う。
「……さすがに、ベタベタするな……。」
 情事の跡が残った肌は、少しベタつき、僕はシャワーを浴びようと思った。
 隣のヒロを見る。気持ち良さそうに眠るヒロの長い睫毛。朝日に照らされて、頬に長い影を落としている。
 ふと、キスしてみたくなった。

………起きちゃうかな………?

 でも僕の横で幸せそうに眠る彼を見ていたら、どうしようもない、何とも言えない気持ちに駆られて。
 ヒロは、眠ったら、自分で起きない限り、目を覚まさないことを、僕は知っている。それが、僕の悪戯心に火を点けて。
 触れるか、触れないか、ギリギリのところで、ヒロの長い睫毛に一つ、キスを落とす。
 ヒロは、『んん……』と声を漏らした。
 暫く様子を見てみる。

 ………起きてない、よね?

 そんな仕草が可愛くて、僕の心にまた悪戯(いたずら)したくなる気分に駆られた。
 今度は、口唇に、して、みようかな?
 そっと、僕の小指をヒロの口唇に当ててみた。寝息が、心地よい。

 起きない………。

 目蓋を閉じて、出来るだけ息がかからない様にと、口唇を近付ける。

 チュッ☆

 口唇が触れた途端、僕の世界が回転した。
 何故だかヒロの躯(からだ)の下になり、ぎゅうっと抱き締められていた。
「……あっ、あれっ……?」
 意外な展開に、声が上ずる。目蓋を開け、ヒロを見る。
 ヒロは、可笑しそうな顔をして、
「寝てるって思ったんでしょ?」
 と言った。
 そうして今度は、舌を絡め合い口腔を犯される。やっとの思いで口唇を離すと、
「嘘寝入りしてたの?」
 とヒロに聞いた。
「………いんや、寝てたよ?寝てたけど………。」
 悪戯っ子のように笑うヒロ。
「………寝てたけど?」
 と僕は聞き返した。
「大ちゃんからのキスで、起きちゃった。差し詰め『眠りの森の王子様』かな?」
 ヒロは、まだ可笑しそうに笑ってる。『眠りの森の王子様』って………自分で言うかな?
「…………何時もなら、叩き起こすまで寝てるのに………。」
 そう言って僕は外方(そっぽ)を向いたら、ヒロの右手が伸びてきて、またもや口唇を奪われる。
「だーかーらー、お姫様にキスされたからだよ。」
 いつもは寝起きが悪いのに、今日はすごぶる上機嫌だ。
「ってゆーか、大ちゃんからのキス、マジで嬉しかったし。」
 そういってニヤけて緩んだ顔を見ていたら、怒る気も失せて。
「これから毎日大ちゃんのキスで起こされたらいいのになー?」
 なんて、惚気(のろけ)た台詞を聞いたら、それもアリかな、なんて思ったけど。
「今回だけだよ?」

 生憎、僕は天の邪鬼だからね、ヒロ。


      《了》


*あとがき*

みなさま、口から砂糖を吐いてくださいましたでしょうか?(笑)

大ちゃんからキス、って、なかなか無いシチュエーションだと思って、書いてみました。

あと、ヒロって本気に好きな人には凄くヤキモチやきだと思います。独占欲も強そう………。


しかし、ヒロの『眠れる森の王子さま』って台詞って(爆)

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