AB!
□腐れ縁ですから、
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「野田ー」
呼ばれて振り返ると、藤巻の顔がすぐそこにあった。
「ちょっと驚いただけで斬り殺すのはねぇーんじゃねーの?」
こほ、と口の中に溜まった血を吐きだし、藤巻は俺を睨む。
「…貴様が悪い」
本当に振り返ったら藤巻がいたのは心の底から驚いたのだ。
反射的にハルバードで殺してしまったのは悪いとは思うが。
ふと、藤巻の腕に目が行く。
塞がりかけの傷口から血が流れ出ている。
「、それ」
「ん?あぁ、道理で痛いと思った」
傷口を指すと藤巻が納得したと言わんばかりに頷いた。
ぺろ、と血を藤巻がなめる。
それが、なんとも言いようもないぐらいに艶めかしく見えた。
気付けばまた俺は藤巻を殺していた。
頭はもう冴え切ってる。
(なんて事、したんだ…)
目を覚ました時の藤巻の復讐が恐ろしくて、
その場から俺は逃げ出す。
思いやりの欠如が目に見える。
ゆりっぺは言っていた。
『あたし達は傷の直りは早い方よ。
でも応急処置をするに越したことはないわ』
その言葉が頭の中でぐるぐると回る。
何度か、藤巻の元へと戻ろうかと思ったりもした。
好きな人を殺しておいて、
それでも好きとか。
いつもの河原にたどりつき、腰を降ろしながら思う。
自然と笑いがこぼれた。