N O V E L 【コードギアス】

□告白
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「ちょっとルルーシュ!さぼらないで!」

相変わらずの祭り好きな会長ミレイにより企画された祭りも終わり、生徒会全員で片付けに勤しんでいる時。大きな段ボール箱一杯に詰め込まれたへんてこな衣裳を運ぶようにミレイに命令され、ルルーシュはぶつぶつと文句を言いながら運んでいた。
しかし、何よりその細腕に運び切れる重量ではなく、額に汗を滲ませ、数メートル進むごとに段ボール箱を置き、溜め息をつきながら進んでいく。

「さぼってるんじゃないです!そもそも会長がこんな祭りをやるから悪いんですよ。いったいいくら生徒会費を無駄にしてることか!それに、この衣裳だって前回の似たようなものがあるじゃないですか!何故使い回さないんですか!」

ルルーシュは珍しく感情的にまくし立てた。薄い肩で荒く息をしながらミレイを睨むが、ミレイは知らぬ存ぜぬで着座していた。その素振りがまた、ルルーシュの神経を逆撫でするが、ミレイはいつもそんな副会長を見て笑うのだった。

「ルルちゃんわかったから早くそれ運んじゃって。会長命令よ!」

ウィンクと同時にそう言うと楽しそうに笑みを刻んだ。

会長命令、と呟き、ルルーシュは苦虫を噛み潰したような顔をすると、盛大に溜め息をつき、段ボール箱を持ち上げた。

「…っ」

持ち上げるだけで一苦労で、立ち上がった途端ルルーシュはバランスを崩した。

あっ、と短い悲鳴をあげ、次の瞬間襲ってくるであろう痛みにぎゅっと双眸をきつく結んだ。

しかし、やってきた衝撃は想像とは違うもの。
ふわりと優しく包まれると同時に、鼻を掠める大好きな匂い。
強く閉じていた目を開くと、そこには自分の上に落下していたであろう段ボール箱。

「大丈夫?ルルーシュ」

体の両側から伸びた腕は眼前の段ボールを支え、その体でルルーシュを支えている。従ってその様相はまるで抱き締められているようで。
顔だけ振り返ると、くるくるの栗毛を揺らし、小首を傾げ、焦ったように目を瞠るスザクがいた。

ルルーシュはスザクの翡翠の瞳に吸い込まれそうな錯覚を覚え、しばらく見入ってしまった。
翡翠には少し間抜けな顔をしたルルーシュが映り込む。
本当はこいつの瞳に映り込むなんてできないのに、と思考を巡らしていると自然に表情が曇った。薄く翳りを覚えたルルーシュの表情。スザクは瞬時にルルーシュの表情の変化を読み取ると、顔を青くし慌てふためいた。

「だ、大丈夫?ルルーシュ!どっか痛くした?保健室行こう?」

目前で慌てふためくスザクに、ルルーシュははっと我に返ると、苦笑を顔に刻む。

「すまない、大丈夫だ。どこも怪我してない」

ルルーシュがそう言うと、スザクはほっと息をつき、微笑んだ。

「次からは怪我する前に僕を頼ってね」

にっこりと相好を崩しながら、スザクは言った。ルルーシュは白い頬に朱を差すと、ふいっとスザクから顔を逸らした。

「怪我してない」

耳まで赤くしているのに憮然と呟くルルーシュがいとおしくて、スザクは更にだらしなく頬を緩める。

「怪我はしてないけど。ルルーシュにはちょっとキツいだろ?」

スザクがほんの悪戯心でルルーシュの耳元でそう囁くと、茹で蛸のように赤くなり、腕の中でくるりと向き直った。

「お前と一緒にするな!この体力バカ!」

と怒鳴り、スザクの胸をドンと叩く。しかし、あはは、ひどいな、と笑うスザク。渾身の力で叩いたつもりがスザクには全く効いていないのがルルーシュの神経を更に逆撫でし、顔を朱に染めたまま俯かせた。

「はいはーいごちそうさま。もうあんた達のイチャイチャ痴話喧嘩見てたら凍え死にそうだから二人で仲直りがてらそれ運んできてー」

ミレイはやれやれと言ったように肩を竦めて見せたが、どう見ても楽しんでいた。その瞳にいつもの悪巧みを考えているときと同じ、燃える悪戯心が滾っている。

「なっ!会長、俺はそんなことないです!」

「そうですよー。仲直りするだなんて。喧嘩なんてしてませんよ!」

真っ赤になって否定の言葉を取り繕うルルーシュの横で、頬を膨らませながらスザクがブーブーと文句を言った。二人の意図する否定が全く違ったベクトルのもので、ミレイは声を上げて笑った。
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