N O V E L 【コードギアス】

□有限という名の永遠を君に。
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 朝の張り詰めた冷たい空気にルルーシュは柳眉を寄せる。冷えた布団を避けるように、自身の脚を抱き込み、胎児のように丸まって布団を頭から被った。そろそろ起きなくてはいけない時間だ、と自分に言い聞かせるも、何分低い室温と重い瞼が体を動かすことを許さない。こんな時にスザクが一緒に寝ていたら温かいのだろう、とふわふわの栗毛を思い出すように虚空を掴んでみる。もちろん手に握られるのはただただ冷たい空気だけで、片腕で顔を覆いながら思わず溜め息混じりに件の栗毛の名前を零した。瞬間、冷たかった指先が、心地の良い温度で柔らかく包み込まれ、ルルーシュは視界を覆っていた腕を避けた。

「おはよう」

にっこりと微笑みを浮かべたスザクが、ベッドから天井を目指して突き上げられていた己の手を握り締めていた。その笑みから、自分の呼び声を聞いたであろうことは確かで、ルルーシュは再び深く布団に潜り込む。振り払おうとした手は強く握られたままで。

「こんなに手が冷たくなってる。ルルーシュ、そろそろ起きなよ」

はぁ、と暖かな息を吐きかけながら、スザクは少しだけ見えている闇色の艶髪に言う。もぞもぞと半分だけ出てきたルルーシュの顔はほんのりと色付いていた。
既に学生服に着替えており、柔和な笑みを浮かべているスザクにルルーシュは眉根を寄せながら低い声で文句を言う。

「大体お前…人の部屋に勝手に入ってきて…。不法侵入だぞ」

どうしても布団から出たくないのか、じとっとした目付きで睨み上げるルルーシュにやはり頬は緩んでしまうわけで。

「ひどいなぁ。勝手に、じゃないよ。ちゃんと百夜子さんに許可貰ってますー」

スザクは少し悪戯っぽく言いながらほら起きて、と腕を取り引っ張り起こしてやる。ルルーシュよりも細くて白い腕をスザクは知らない。寒い、と呟きながら、温もりを湛えている布団に倒れこもうとしているルルーシュの薄い背中に腕を回し、抱き上げた。ルルーシュの悲鳴ともつかない声が響き、顕わになったその脚にスザクは目を瞠った。

「ルルーシュ…。君、何て格好で寝てるんだ。これじゃ寒いの当たり前だよ」

先程スザクが開けたカーテンから流れ込む眩しい陽光に照らされて、パジャマともつかない大きめのワイシャツに、下は下着だけという格好は官能的で陶器のような両脚が白光る。頬をほんのりと赤らめながら、うるさいと呟くルルーシュは細い指先でクローゼットを指し示した。

「着替えるから降ろせ」

少女のように照れているのに、憮然とした声で言うルルーシュに、ふにゃりと相好を崩し、毛足の長い絨毯の上に優しく立たせてやる。ふん、と鼻で笑いながら、ルルーシュはクローゼットの中から学生服を取り出すと身に纏った。もたもたと緩慢な動きで着替えているルルーシュの後ろ姿を、ベッドに座り眺めるスザクに声が掛けられた。

「その…明後日なんだが、一緒に買い物に行かないか?」

いいよ、と暖かに即答すると、一つルルーシュが息を吐くのが聞こえた。どこか張り詰めたような緊張感を伴った声音にスザクは癖毛を揺らして小首を傾げたが、いつも寝起きの悪い彼人を思い出して一人自己完結する。そしてその申し出である買い物、と言うのはルルーシュの照れ隠しで、つまるところ一緒に出かけたいということ。素直に気持ちを伝えてこないルルーシュに歯痒い気持ちになることも多かったが、スザクはそんなルルーシュが寧ろ好きだった。
 漸く着替え終わったところで丁度良くドアの外側から、朝食ができたことを知らせる百夜子の声がする。今行きます、とスザクの明るい返事がして、ルルーシュの鞄を手に取るとドアを開いた。
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