N O V E L 【コードギアス】

□何を愛と呼ぶのかわからないけれど。
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フンフンと鼻歌を歌いながら生徒会室へと歩を進める栗毛の男。

翡翠の瞳を輝かせながら生徒会室の自動ドアの前へと立った。


開いた途端、そこで待ち受けているであろう生徒会の面々――コスプレをしたミレイ、クラッカーを鳴らすリヴァル、プレゼントを手にしたシャーリー、どことなく乗り気で無さそうなカレン、控え目にお祝いを言うニーナ…

そして何より、柔らかな笑顔を湛えて立っているであろう最愛の人、ルルーシュ・ランペルージ。


ドアを開けたそこに彼の人がいると思うだけで自然と頬が緩む。
自動ドアが開くまであと一歩を残したまま一人相好を崩し、ふっと笑いを漏らした。

よし、と呟いて一歩踏み出すと、プシュッと空気が抜けるような音がして自動ドアが開いた。


予想していたパーンという音が耳を叩き、火薬の匂いが鼻をくすぐる。

「「お誕生日おめでとう、スザク!」」

盛大なクラッカーの音と共にミレイ、リヴァル、シャーリー、カレン、ニーナ。生徒会の面々の声が同時に降り掛かってきた。

今日、7月10日は枢木スザクの誕生日であった。

「ハッピーバースデースザク!これ俺たちから!」

と派手にラッピングされた包みをリヴァルに渡され、スザクは笑みを返しながらありがとう、と言って受け取った。

「あたしたちみんなからなんだからありがたく使うのよ!」

と何故かサンタクロースに扮するミレイがスザクの肩を叩いた。

「みんなで考えて決めたんだよ」

とシャーリーが満面の笑みで教えてくれた。

それに、と生徒会室中に飾り付けられた紙テープや、紙で出来た花、¨HAPPY BIRTHDAY SUZAKU!!!¨と言う文字と描かれたスザクの似顔絵。我先にとそれらを自慢する彼らに笑顔を向けながらも、目では彼の人を探していた。

「あ、れ…、ルルーシュは?」

目当てのアメジストを見つけられず、スザクはきょとんとしてしまった。

「あー、ルルちゃんねー。ルルちゃんさっき出ていったわよ」

ミレイにそう言われスザクの表情は曇った。そして、

「なんだっけ、約束があるとか言ってたわねー」

指を唇に当て、いかにも考え中と言った素振りをミレイが見せていると、ニーナが横から口を挟んだ。

「ルルーシュ君ならさっき金髪の男の人と楽しそうに歩いて行ったけど…」

ガタン、とスザクは手に持っていた包みを落とした。

リヴァルがすかさず拾うと、折角みんなで選んだんだから大切にしろよな、と笑いながら手渡してきた。ありがとう、と恐らく笑みを浮かべながらスザクはそれを受け取った。

自分は今笑えているだろうか、そんなことにしか頭が回らなかったが、途端にどす黒い感情が胸一杯に溢れてきた。


何で僕の誕生日にわざわざ男と出掛けるんだ。どうして今日、どうしてこの時間なんだ。何で、何をするために、どこに、誰と、行かなければならないんだ。

「スザク…?具合悪いの…?」

控え目なシャーリーの呼び掛けにはっとすると、苦笑しながら、

「ごめん、ちょっと急用を思い出したから帰るね。今日は本当にありがとう。僕のためにこんなにお祝いしてくれて」

と言った。

「えぇー!もう帰るのかよ!」

とリヴァルが騒ぎだし、ミレイもまだ色々仕掛けが残っいるから、と言い、みんなスザクを引き止めようとしたが、それでもいつも通りの笑顔でまた明日ね、と手を振って送り出してくれることに些かの罪悪感を覚えた。しかし、それもよくわからないどす黒い感情に呑み込まれ、すぐに掻き消えてしまった。

ルルーシュは今、どこかで、僕の知らない、金髪の男と、楽しそうにしている。

そう考えただけで胸の中の醜い感情は沸き立ち、止まることを知らなかった。


でも、ルルーシュが素っ気ないのはいつものことじゃないか、気にする必要なんか無い、と妙に自分を納得させだしたことにすら嫌悪感を抱いた。

あーもうっ、とガシガシ頭を掻くと、クラブハウスに向けていた足を、特派のある政庁へと向けた。
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