N O V E L 【コードギアス】

□痛いほど美しい君の愛に。
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きらきらと暖色の電球の明かりを跳ね返すツリーの飾りの前、あれこれと話す二人の影は楽しそうに揺れる。

「ほら、これルルーシュに似合うんじゃない?」

深い紫と、雪のような白が美しいモールをルルーシュに合わせながらスザクは笑う。

「俺に似合うもの探してどうするんだ…。ツリーに飾るんだろう」

至極当然にそう呟くルルーシュに、やはりスザクの顔は緩く崩されていて。

「そりゃそうだけど、ルルーシュに似合うものの方がいいじゃないか」

にっこりと笑いながら言うスザクに、ルルーシュは恥ずかしくなる。誰かに聞かれたらどうするんだ、と内心穏やかではない。するとスザクはぱっと表情を変え、翡翠を輝かせながらルルーシュの細い腕を掴むと歩きだした。為されるがままルルーシュは着いていくと、がさがさとスザクは陳列棚を漁る。

「ルルーシュ!これ!」

勢い良く振り向きざまルルーシュの鼻先に掲げられたのは、なんとも露出面積の広いサンタクロースの衣裳。パッケージには挑発的な視線を送る金髪女。

「馬鹿言うな!ナナリーにそんなもの着せられるか!」

スザクの手から取り上げると棚に戻そうと手を伸ばす。瞬間、がっしりと手首を掴まれ、手を離すように要求される。ダメなものはダメだ、とルルーシュが断固拒否していると、後ろ手に折れそうな腕を捻り上げられ、敢えなく露出サンタクロースを奪い返されてしまう。

「貴様…!そうまでしてナナリーに!」

捻られた腕を擦りながらスザクに抗議するが、涼しい顔をして笑い掛けられる。

「そうだね。ナナリーが着てもかわいいだろうけどこれは君が着るんだよ、ルルーシュ」

真っ直ぐに見つめてくる翡翠は座っていて冷たい。口元は笑っているのに、目は笑っていない。ルルーシュ、ともう一度確かめるように言うスザクに対して拒否権がないことを十分に悟り、がっくりと肩を落とした。

「…勝手にしろ…」

好きだよ、と耳許で囁かれそれだけで何でも許してしまいそうになる、現に悪い気はしない自分が悔しい。しかしスザクを怒らせるとろくなことにはならないということを知っているので素直に従うことがルルーシュの常だった。ルルーシュが持ちかけた買い物かごを取り、上機嫌で言葉を繋ぐ。

「荷物持つよ、貸して」

ルルーシュがまごまごと視線を泳がせ、あのその、と言っている間に、手早く肩に掛けられたトートバッグや手に握られたレジ袋を抜き取り手にした。すっかり身軽になったルルーシュは、荷物だらけのスザクを見てやはり申し訳なくなる。

「お前だけ荷物持ってたら俺が性格悪いみたいじゃないか」

トートバッグだけは、とスザクの腕からもぎ取る。

「別に今日くらい遠慮しないで全部僕に任せればいいのに」

口を尖らせ、拗ねたように笑いながらスザクは言った。遠慮なんてしてない、と言いながらルルーシュは会計をしにレジへと向かう。慌てて大荷物のスザクが着いていった。
電子音を鳴らしながら、バーコードに赤い光を当てて小計が積まれていく。無機質に液晶に映し出される金額に、スザクは己の財布とにらめっこしていた。

「だから言ったんだよ…。どうせ足りないんだろう」

ルルーシュは盛大にため息を吐きながら言うので、スザクはかしかしと頭を掻く。しかし既に何軒かの店を回って、相当額が消えていったであろうスザクの財布はそこそこの厚さがあった。すっかり困って泣き付いてくると思っていたルルーシュは、拍子抜けしたように取り出しかけていた財布を鞄にしまい込んだ。

「こちらお客様へのプレゼントとなっております。良いクリスマスを」

そう言いながら店員は背後の棚から二つの小さなテディベアのキーホルダーを持ってきて、ルルーシュに手渡した。

「お似合いですよ」

くす、と笑いながら言った店員にあんぐりと口を開けて立ち尽くしていると、スザクはありがとうございます、と人当たりの良い笑みを浮かべてルルーシュの腕を取り、店を後にした。ずっと腕を組ませたまま歩くので、ルルーシュは口を開いた。

「スザク…人前でこういうことはやめろと言っただろう…!」

腕に力を込めて引いてみるも、スザクに適うわけもなく引き抜けない。その間スザクは歩く速度を緩ませないので、軽いルルーシュは引き摺られて簡単に転びそうになる。

「ほらほらルルーシュちゃんと前見て歩かないと転んじゃうよ?」

にこにこと笑いながら言うスザクはつまり歩く速度を緩める気は無いし、腕を解く気もなかった。それに、とスザクがもう一度言葉を紡ぐ。暖かな笑顔に乗せて。

「お似合いです、って言われたし今日くらい良いじゃないか」

僕は青いリボンの方ね、と先ほどのキーホルダーを付け加えながら言った。仕方無しに適当な相槌を打ち今日くらい、と会ってから今までに何度目かになる言葉をルルーシュは脳内で復唱する。思い返すと今日くらいと言いながら、スザクはいつもよりしつこいことに気付いた。果たして今日が何の日なのか、ルルーシュには皆目検討がつかなかった。精々日曜か、それともスザクのことなので、ルルーシュとデートの日か。と同時に、どうしても公衆の面前という理性が働いて居たたまれなくなり、今日くらいを言い訳に聞き分けないスザクへふつふつと苛立ちに似た感情が湧いてくる。
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