短編

□甘い悪魔と。
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ああ、なんて甘いんだろう?

彼女がこんなに甘いなんて、知らなかった。
いや、解っていたけれど、解りたくなかっただけかも知れない。

何で僕は、わかりたくないなんて 想ってしまったんだろう?

彼女は甘いのに、ずっと抱きしめていたいくらいに甘いのに。

甘い甘い甘い甘い甘い、

蜂蜜?砂糖?いや違う。

コレは、『有香』って甘さだ。
僕だけの、世界で一番甘いモノ。



「雲雀さんっ」

ああ、こんなに可愛い。
「きょうも甘いモノ日和ですよっ!こんなにあったかいし、丁度いいですねっ」
くるくると渦巻く、瞳の中に見える輝く星たちが有香をもっともっと甘く可愛く染めていく。

桃色桜色紅色暗黒に。

彼女は甘いモノが大好きだった。
家庭科部にいて料理が上手だったことも幸いしてか、しょっちゅう自分で菓子やらなにやらつくっては僕のところに持ってくる。

「きょうは、こんなにいっぱい作っちゃったんですっ、一人で食べるの寂しくて」

可愛い、

一人で食べるのが寂しいなんて可愛いじゃないか。

こんなに可愛いから、
明るくて優しいから、
有香は 友達がたくさんいる。
本当は彼女の周りに群れる奴をみんなみんな消してやりたいけど、有香が悲しむからやらない。
有香の泣き顔など、絶対見たくない。
有香を泣かせることなど、絶対したくない。

本当は、本当は。

有香に群れる奴を咬み殺してやりたいのに。
そしたら、有香 は僕だけのものになるのに。
彼女だってソレが絶対いいはずなのに。 

彼女はソレを拒んで、


もっともっと、甘いモノだけを求めていた。


有香は友達など要らないと言っていた。
甘いモノだけでいいと言っていた。
けど、僕には、僕だけには、ずっと一緒にいてほしいと言っていた。

なんて可愛いんだろう。

「雲雀さん、コレ食べます?」
「うん」
「はい、どーぞっ!」

…可愛い。

可愛すぎる。その顔、反則だ。
唇の端にクリームが付いているところなど、可愛すぎて息が詰まってしまいそうになる。

可愛い。

「有香」
「はい?なんです――…」

折角だから、口付けてあげた。
有香が可愛すぎるから。

「うふふ、何ですか…甘いですよ?もう一回くらい、してくださいね?」
「いいよ、いくらでもしてあげる」

甘い甘い甘い甘い甘い。
いくら口付けても甘い甘い。
可愛い可愛い有香のためなら、どんな努力も厭わない。


彼女が毒を呷って逝くなら。


喜んで付いて行く。


最期に味わうのが、甘い甘い君なら。


君はまるで。



甘すぎる悪魔だ。










‡。・☆・*・☆・。‡

なんかおかしいぞ…?!
前作の夢主が料理苦手だったからって…

 

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