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□走馬灯
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 ※死ネタです!










 病室のカーテンから太陽の光
 が差し込んでいるが、不思議
 とまぶしくはなかった。

 もう、まぶしいなんて思うこ
 とすら出来ない。俺はすう、
 と息を吸った。



 俺は、ある病気に体を蝕まれ
 ている。原因、病名は不明。
 生まれつきではなく、症状が
 出たのは最近のこと。



 はじめは指が。
 動かす事はできるが、以前の
 様にパソコンのキーボードを
 素早く押す事も、携帯電話を
 扱う事も出来ない。

 そして、シズちゃんを殺すた
 めに振り回していたナイフを
 器用に握る事すら出来なくな
 った。



 その次は脳が。
 友人の顔や名前、おおまかな
 事は覚えているが、幼い日の
 事、仕事の細かい事などは記
 憶がすっぽりと欠落しており
 、しかも時間とともにその僅
 かな記憶さえぼろぼろと崩れ
 ていく。



 そして今日、左目が見えなく
 なった。右目だけでは焦点が
 あわず、歩くのがやっと。


 少しずつ、少しずつ。
 俺の体が壊れてゆく。



 人に恨まれるような事ならた
 くさんした。これはその罰な
 のだ、と思う。


 俺がこの病気にかかっていた
 ことを知ったのは先月の事。

 新羅にそう言われた時、驚き
 したが、不思議と悲しくはな
 かった。よく覚えていないが
 、たぶん適当にその場をごま
 かして家に帰った。



 変なのは、その日からシズち
 ゃんが優しくなった事。
 よくわからないけど、シズち
 ゃんは俺の世話をしてくれた
 。波江には病気の事について
 おおまかな話をしてあるから
 、今頃は弟かだれかといるん
 だろう。



 だんだん頭が回らなくなって
 、目が見えなくなって、手も
 足も動かなくなって。

 しばらくは病院で過ごす日々
 が続いた。白い天井も、白い
 壁もつまらないものだ。時間
 がたち、自分が誰なのかも怪
 しくなってきていて、ああ、
 もう死ぬのを待つだけなのだ
 と一人で思ったりした。

 そんな俺の頭を、バーテン服
 を着た男が撫でてくれたのを
 微かに覚えている。ほとんど
 ぼやけて見えないし、その男
 が一体誰なのかわからない。


 「…………誰?」

 「俺は、平和島静雄っていう
 んだ」

 「ふうん………」

 その声はとても優しくて、悲
 しそうだった。今の俺には目
 の前の男が誰かわからない。


 なのに、なのに。

 何故?



 それはひどく懐かしくて、視
 界のほとんど働かない俺でも
 解るほど、男は悲しそうな顔
 をしていた。




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 何故私が何かを書くと全て厨
 二になってしまうのか……

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