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 「、…………」


 目が覚めると、朝だった。

 先日臨也のマンションから走
 って帰ってきてから15時間以
 上寝てしまったことになるが
 、今日は仕事が休みなのを知
 っていた静雄はあせること無
 く起き上がると、顔を洗いに
 洗面所へむかった。

 もう昨日ほどイラついてはい
 ないし、別段腹ただしい訳で
 はなかったが、かわりになん
 とも言えない悲しみが静雄の
 胸に込み上げてきた。

 臨也が知らない男と寝ていた
 。その事実を認めたくなくて
 、水をすくっては顔にかけて
 これは夢だと言い聞かせた。
 頬で水が弾けては落ちて冷た
 さを感じ、一気に現実へと引
 き戻される。顔をタオルで吹
 いて、鏡を見つめた。鏡に映
 るのは、まぎれもない自分の
 虚ろな姿。静雄が無意識に溜
 め息をついたときだった。

 ベッドに置いたままだった携
 帯から着信をつげる音がなっ
 た。着信は新羅からだった。


 「もしもし」

 「「もしもし静雄?昨日、臨也
 のマンションに行った?」」


 ちくり、と胸が痛んだ。

 「一応……行った」

 「「そっか、風邪大丈夫そうだ
 った?」」

 ちくり、ちくり。
 胸が少しずつ痛みをまして、
 収まった筈の苛立ちが溢れか
 えった。

 風邪?
 俺は臨也が心配でマンション
 まで行った。でも臨也はそん
 な事知らずに厭らしいことを
 していた。それが静雄にとっ
 てどんなに苦しかったか、悔
 しかったか、苛立ったか。


 「「もしもし、もしもーし?聞
 こえてる?」」

 「あ、あぁ、悪い」

 黙りこむ静雄を不審に思った
 のか、新羅は訪ねてきたが、
 深くは聞いてこなかった。

 「「それでね、本当なら昨日、
 臨也が薬をとりに来る筈だっ
 たんだけど、来なかったんだ
 よ。電話しても繋んないしさ
 。」」


 「さあな、忘れてんじゃねえ
 のか?」

 「「うーん……丁度切れる日だ
 ったから絶対来るように言っ
 といたから、それは無いと思
 うんだけどなあ……?」」

 新羅は向こう側で何かぶつぶ
 つと呟いていたが、その後一
 方的に電話を切ってしまった
 。なんとまあ、自分勝手な。

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