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 「なんだよこれ」


 静雄の位置からでは臨也の顔
 はよく見えないが、男が静雄
 に見せつけるように臨也の体
 を弄ぶと、臨也は静雄が聞い
 たこともないような甘い声を
 出している。

 「やだ、シズちゃ…、見ない
 で……っ」

 「人と寝てる最中に他の男の
 名前なんて言わないでくださ
 いよ、ねえ?」

 四木は静雄の方に目をやり、
 問いかけた。静雄の中に、怒
 りが沸き上がる。

 それは、臨也を抱くこの男へ
 の嫉妬。それから、自分以外
 の男に甘い声を出す臨也。


 気が付いたら、静雄はマンシ
 ョンから走り出していた。コ
 ンビニ袋も玄関へ投げ捨て、
 ただひたすら走り続けていた
 。

 部屋を出る前の、あの男の余
 裕ぶった笑顔が頭から離れな
 い。静雄は脚をとめ、自宅へ
 向かい、夜でもないのに眠り
 についた。





 *************



 「これでもう、あなたを助け
 に来れる者はいませんね」

 「やだ、四木さ……っも、許
 して…くだ…、」

 臨也はベッドの上で泣きはじ
 める。風邪をひいてぼんやり
 取引の電話をして、曖昧なま
 ま約束をすっぽかしたら、四
 木がマンションまでやって来
 ていきなり強姦された。

 風邪をひいて出た熱と、事情
 中特有の甘ったるい熱が体を
 火照らせて、視界がぼやぼや
 と霞む。

 「っひく……、っ、やだ……
 、もう嫌です、……」


 「じゃあ俺の前であの男の名
 前を呼ぶな」


 四木は臨也の赤い目を睨み付
 け、今までとは声色も口調も
 変えてそう告げた。

 「っ、や……ひく、シズちゃ
 ん、助けて……」

 「……呼ぶなと言いませんで
 した?」

 「っ、ごめんなさ……あ、…
 やら……、は、ぁ、っ」

 四木は既に挿入してあった自
 身で、際奥をついた。びくん
 と体を震わせた臨也は、一際
 強い快感を受けて、再び声を
 あげた。

 (絶対シズちゃん勘違いした
 ……、風邪ひいてるのにセッ
 クスしてるなんて幻滅された
 よね)

 もうろうとする意識を辛うじ
 て繋いで、必死に声をあげな
 がらこれが終わるのを待つし
 かない。そう臨也が考えた直
 後に、四木がずるりと自身を
 引き抜いた。

 「っ、……ぁ、?」

 「今、あの男の事考えてまし
 たよね?」

 「いや、そんなこと……」

 ぎろりと大人特有の鋭い視線
 に背筋が凍るのをかすかに感
 じながら、臨也は四木に尋ね
 た。

 「どうした、ん……ですか、
 ?」


 擦られて少しずつ反応し始め
 ている自身が恥ずかしい。さ
 んざん殴られ、啼かされ、掠
 れた声は普段余裕の笑みを浮
 かべる臨也からは、想像も出
 来ないくらい卑猥だった。

 「四木さ、あ、……っ!?」

 四木は無言のまま、精液のこ
 びりついた臨也の細い腰を掴
 むと、一気に自身を挿入した
 。

 「ひ、あっ、あ、!!ん」

 甲高い声をあげて、臨也が目
 を見開く。滑りのよくなった
 そこは、簡単にそれを受け入
 れた。

 「あ……、っ、も、やめて、
 ひぁ……っ四木さ、」


 何度も達した後で、臨也のも
 のから白濁したものが出るこ
 とは無く、ぶるんと震えて肩
 で息をするしかなかった。





 「はあ、っ、はぁ、」



 けほ、っと咳き込み、臨也は
 四木に寄りかかったまま意識
 を失った。

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