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 「なにこれ何で?なんで?俺
 なんで女になってるの?なん
 でなんでなんでなんで?」


 臨也はベッドの上で、マンシ
 ョンの中にあった布団をある
 だけ引っ張り出してきて、頭
 から被って、がくがく震えて
 いた。


 ありえない。

 新羅に貰った薬を飲んで寝て
 、起きたらこんなことになっ
 ていた。


 あまりのの出来事に熱もふっ
 飛んで、頭も痛くないし、体
 もだるくない。


 でもこんなことになるなら、
 インフルエンザでも盲腸でも
 肺炎でもかかって寝たきりに
 なった方がよかった。


 な ん で 女 に な っ
 て ん だ よ 。


 髪も少し伸びたし、背は10p
 くらい低くなった。

 下半身が変な感じだし、胸の
 違和感が半端ないし、臨也は
 心の底から死にたいと思った
 。


 そんなとき。


 インターホンが鳴る音がして
 、臨也は我に帰った。

 波江には風邪をひいた時点で
 仕事には来なくていいと言っ
 てある為、マンション内には
 ベッドで丸まっている臨也し
 かいない。



 臨也は居留守を使おうと、布
 団をぐいっと引っ張って、さ
 らにまるくなった。


 ピンポンピンポンピンポンピ
 ンポンピンポン...


 う る さ い ん だ よ




 臨也の脳内にある人物の顔が
 思い浮かぶ。



 平和島静雄


 ああ腹ただしい。

 残念ながらあの男の顔しか思
 い浮かべられない。もし違う
 誰かが来たのだとしても、宅
 配便くらいだろうが、生憎何
 かを頼んだ覚えはない。


 仕事関係の誰かなら、電話や
 メールで事前に訪問すること
 を伝えるのが普通だし、第一
 臨也には、風邪をひいたとき
 に心配して看病してくれるよ
 うな友人など、ほとんどいな
 い。



 あいつしかいない。



 臨也は決意して、布団を一枚
 だけ被って、くるまったまま
 玄関に向かった。


 中からそっと覗けば、予想通
 り、そこにはバーテン服を着
 た男が立っていた。


 ああ最悪だ。
 なんてタイミングに俺を潰し
 にきたんだろうこいつは。


 こんな姿を見られて笑われる
 くらいなら、殴り殺された方
 がまだいいかもしれない。


 その間にも、インターホンは
 うるさく鳴り響いていて、臨
 也がパニックに陥ったときだ
 った。


 ばきっと音を立てて、厳重な
 ロックのかかったセキリュテ
 ィ万全が売りの玄関のドアが
 ぶっ壊れた。


 や っ て く れ たな 
 あ の 化 け 物 め


 臨也は壊されて倒れてきたド
 アを避けて、ただバーテン服
 を見上げるしかなかった。


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 新羅に言われて来てみたはい
 いが、肝心なノミ蟲が出て来
 ない。一瞬、留守かと思った
 が、何故だか中に臨也がいる
 ようにしか感じられなくて、
 むかついたからドアを蹴っ飛
 ばした。


 「臨……也…………?」


 ドアの無くなった玄関には、
 うずくまった臨也がいた。


 何が何だかわからなくて、俺
 はその場に立ち尽くしてしま
 った。


 普通ならば、インターホンに
 出ず、居留守を使っていたこ
 いつにキレてぶん殴っていた
 筈だ。


 しかし、俺の視界に入ってき
 たのは"普通"の臨也ではなか
 った。

 髪も長いし、肩も小さい。第
 一、あのノミ蟲が毛布にくる
 まって震えながら玄関にいる
 訳がない。


 「お前……臨也か?」


 「……違う」


 「あぁ゙?じゃあ誰だよ?」


 「人違いだと思います、ここ
 は折原さんのお宅ではないで
 すよ」


 「何で俺が探してんのが"折原
 "なのを知ってんだよ」


 「……………」


 この臨也は馬鹿なのか?
 いや、それだけテンパってる
 のか。


 「臨也なんだろ?面白いこと
 って……女になってるなんて
 考えもしねえよ…」


 臨也は素直に引き下がり、自
 分が臨也だということを認め
 た。


 「シズちゃん助けて」


 どうやら新羅から貰った風邪
 薬を飲んで寝て、起きたらこ
 うだったらしい。世の中には
 不思議なことがあるもんだ。




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