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□はじめてをあなたに
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 がしゃん


 「うわ、」


 今日は久しぶりの休日で、静
 雄は臨也のマンションで夕食
 を食べていた。

 付き合い初めて二ヶ月たった
 が、お互いに忙しく、一緒に
 過ごしたり出掛けたりするの
 は今回が初めてだ。


 臨也はこの日がくることを待
 ちわびており、頑張って練習
 したかいもあって、静雄に満
 足のいく料理を振る舞うこと
 ができた。静雄は笑顔で「うま
 い」と言った。


 それが嬉しくて嬉しくて、調
 子に乗った臨也は、普段はあ
 まり飲まない酒を大量に飲み
 干した。


 静雄に平気なのかと驚かれた
 が、酒に弱いと思われること
 が嫌で、「へいき」とだけ呟い
 て再びグラスの中身を飲み干
 すのだった。


 案の定、臨也は完全に酔って
 しまい、ぽわぽわと遠退いて
 いきそうになる意識を何とか
 保とうと、頬をべちんと叩い
 たときだった。



 腕がグラスに当たり、そのま
 ま中身が溢れだした。テーブ
 ルの上をみるみる浸食してい
 く赤いワイン。


 「ごめ、今台拭き持ってくる
 、」


 キッチンに向かおうと立ち上
 がった瞬間、くらりと意識が
 反転。臨也はその場に崩れて
 しまった。


 「お前やっぱり酒弱いんだろ
 ?無茶して飲むからそうなん
 だよ……、大丈夫か?」


 「俺、酒、弱くないもん…、
 どうしよ…、立てな、い…シ
 ズちゃん…」


 顔を真っ赤にして涙目で訴え
 る臨也に、静雄はキッチンへ
 台拭きを取りに行き、テーブ
 ルの上のワインを拭き取り始
 めた。


 「シズちゃんごめんね、せっ
 かく来てもらったのに、俺、
 こんなんで、ごめ、っひく」


 「うっせえな、泣くなよ」


 おかしい、いつもはこんなん
 じゃ泣かないのに。臨也は自
 分が酷く惨めに感じて、ぼろ
 ぼろ泣いてしまった。


 静雄は台拭きを片付けて、臨
 也をぎゅっと抱き締めた。

 臨也は静雄の胸板に顔を張り
 付けて、しばらくぐずぐず泣
 いていたのだが。


 「シズちゃん………」

 「何だよ」

 「聞いていい?」

 「………」

 「何で勃ってんの……」

 「…お前自覚ねえのかよ」

 (ふざけんないい雰囲気が台
 無しだ)


 臨也が半分呆れながら怯える
 ように訪ねると、静雄はため
 息をついてそう言った。



 「これからどうなるか、何と
 なくわからねえわけじゃねえ
 だろ?」


 「……え?わかんなく…ない
 …?、ちょっと待って、わか
 るけどわんない、涙止まっち
 ゃった」


 「お前可愛いすぎんだよ」

 「な、俺男だし!嬉しくない
 し!………嫌じゃないけど」


 静雄は顔を赤くして俯く臨也
 の顔を上げて、口付けた。


 「ふ、ぁ………、ん…、っ」


 酒で回らなくなった思考が、
 余計に回らなくなる。噛みつ
 くようなキスに、腰の力が抜
 けて、つい声が出てしまう。


 するりとシャツがめくられて
 、これから起こる事に身がす
 くんだ。臨也は、女性経験は
 あるが、男性相手にSEXを
 したことがない。知識も全く
 というほど無いし、正直少し
 怖かった。


 「男とするの、初めてか?」

 「そう、だよ…、」

 改めて聞かれると少し苛立つ
 。そんな臨也の心情を察した
 のか、静雄は口を開いた。

 「よかった」

 「な、何でだよ、どうせ俺な
 んかより上手くて慣れてる奴
 の方がいいんだろ、っ、」

 「お前だからだにきまってん
 だろ」


 静雄は自嘲気味に笑う臨也の
 顔を掴み、目をみて言った。

 臨也は顔を真っ赤にして、再
 びぼろぼろ泣き始めた。


 「…俺優しいから、初めては
 シズちゃんにあげる」



 臨也はふにゃりと微笑んだ。







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