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 指定された、そういう取引が
 頻繁に行われているホテルに
 向かった臨也は、いつもの部
 屋に向かい、ソファに座る四
 木のもとにすがりついた。


 「、…っ、四木さ、ん、くす
 り、ください」


 頬を染めて泣きながら、四木
 の足元にうずくまる臨也。


 そんな普段の彼からは想像も
 つかない姿の臨也も、四木に
 とっては馴れたものだった。

 みんなそうだ。

 四木は、薬の嫌いな赤林に感
 づかれないよう、個人的に目
 をつけたごく僅かな人物にだ
 け大麻や麻薬、それに必要な
 道具などを売ったりしていた
 。

 彼が目をつける人物というの
 は、決まって何かに絶対的な
 恐怖を抱くもの。例えばある
 人物を、例えば昔の恋人とよ
 く似た人物を、例えばある歌
 を。何かしらトラウマになっ
 ていることがある人物に、薬
 を売り付けては利用してきた
 。


 だが臨也の場合は違かった。


 四木は、臨也に特別な感情を
 抱いていた。このことは、勘
 の鋭い臨也にもわからない。


 男に襲われ、「男」という存在
 に恐怖を抱き始めた臨也。

 その地獄から救うために薬物
 を与える。


 そうすれば、臨也は自分を頼
 り、薬が切れれば薬を貰いに
 やって来る。


 本当は、薬などどうでもいい
 のだ。


 臨也に会うための言い訳に、
 薬を使っているだけ。最低な
 ことをしているなんて、とっ
 くの昔に気づいている。


 「今回の分はこれです。随分
 間隔が狭くなっているようで
 すが平気ですか?」


 「へい、きです…もう、なき
 ゃ、死んじゃ…う、」



 臨也はソファに座る四木の足
 元にくずれたまま、息を荒く
 吐いて大量の注射器を受け取
 った。


 本来なら少量でも値段の高い
 薬物を、臨也はほとんど無料
 でしかも大量にもらっている
 。はじめて臨也が四木からそ
 れを受け取ったとき、金額を
 聞いた臨也は四木にこう言わ
 れた。


 「金はいりません」


 きょとんとする臨也の唇を指
 でなぞり、


 「あんたの体で払え、情報屋」



 そのままベッドへ押し倒され
 て、臨也は初めて四木と体を
 繋げた。怖かったし、今でも
 怖いけど、薬のためならと毎
 回体を四木へ捧げた。



 歪んでいる。歪んでいる。

 臨也は四木から受け取った注
 射器を腕に打ち、少しずつ呼
 吸を落ち着かせた。


 「はあ、っ、……」


 虚ろな目で薬に溺れる臨也の
 体を引き寄せ、四木の上に座
 らせた。


 「しき、さ……ん」


 「ベッドへ行きますか?」


 「しき、さんの、好きなとこ
 ろでいいですよ、」


 四木は臨也をソファへ押し倒
 し、Vネックをするりと脱が
 す。もう何回こういう行為を
 したかは数え切れないが、臨
 也は一向に慣れないらしい。


 僅かに震える臨也の肩を抑え
 、深くキスをする。


 「ん、…ふ、っ、…」


 くぐもった声が響く。そのま
 ま首、鎖骨、胸へとキスを落
 とし、ベルトを外した。


 臨也は相変わらず恥ずかしそ
 うに俯いている。四木は知っ
 ていた。自分がどんなに臨也
 を思おうと、臨也はこちらに
 見向きもしない。ただ、薬の
 支払いを体でしているとしか
 思っていないのだ。


 臨也の後ろを慣らし、ローシ
 ョンも何も使わずに自身をあ
 てがう。


 臨也は一瞬驚いて身をすくま
 せたが、受け入れるように微
 笑んだ。


 (薬のためだから)


 臨也の微笑みから、そんな声
 が聞こえてくるようだった。

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