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□薬に溺れて死ねばいい
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 *モブイザ表現あり
 *臨也が薬物乱用してます












 着信履歴:四木さん


 履歴をうめつくす、「四木」
 という文字。

 そのうちの一つを押して、通
 話ボタンを押す。

 呼び出し音が鳴る、早く、早
 く出て、四木さん、早く、早
 く早く早く早く早く早く早く


 臨也はがたがた震える自分の
 肩を抱きしめ、声を出さない
 ように叫び、待つ。

 何秒か経って四木が電話に出
 た。

 「「……四木です」」

 「四木さ、ん!!、薬、薬下
 さ、い、…死んじゃうっ、」


 「「随分感覚が狭くなりました
 ね」」



 臨也が泣きながら告げると、
 四木は電話越しにふう、とた
 め息をつき、場所を告げて電
 話を切った。


 通話時間は30秒たらず。臨也
 は黒いコートを着て、ふらふ
 らとした足取りでマンション
 を出た。


 臨也は、薬物が無ければ生き
 ていけない。

 否、そうなってしまった。




 以前、静雄とケンカをした際
 に傷を負い、路地裏に隠れた
 ときだった。




 *************


 雨が降っていた。



 「はあ、はぁ、っ、」


 静雄が放った看板が脇腹を直
 撃。やっとのことでここまで
 逃げてきて、薄暗いアスファ
 ルトの壁に倒れ込んだ。

 壁に寄りかかる衝撃だけで意
 識が飛びかける。痛い、痛い
 。血は見えるけど、どこから
 出ているのか、どれくらい出
 ているのか解らない。


 「なあ、あれ折原じゃね?」


 ふと声がして、そちらを見る
 と、高校時代の同級生が数名
 いた。


 「あー、あの調子乗ってた奴
 か」

 「久しぶり、俺のこと覚えて
 るーう?」


 覚えてるも何も、ぼんやりし
 た意識で、親しくもなかった
 数年前の知人の顔など思い出
 せない。


 「…何のようかな?」



 臨也が問いかけるのと同時に
 、歩み寄ってきた彼等の表情
 が獣のそれへと変わった。



 ここらへんからはほとんど記
 憶が無い。ただ一つ、確実に
 解るのは、彼等に自分は犯さ
 れてしまったことだった。

 服を剥ぎ取られて、数人に囲
 まれて、腕も足も縛られた。
 ビデオカメラで録られていた
 と気づいたときには、絶望以
 外のなにもなかった。


 腹の不快感と、激しい痛み、
 冷たい雨。忘れられるわけが
 なく、今でも腕には縛られた
 跡が残っているし、背中の煙
 草を押し付けられて火傷した
 跡は、一生消えそうにない。


 こんなことになるなら、いっ
 そのこと看板が頭にでも当た
 ってシズちゃんに殺されれば
 良かったと、臨也は何度思っ
 たことか。


 その顔立ちや容姿から、男に
 襲われかけた事は初めてでは
 無かったが、実際に襲われた
 のは、それが初めてだった。


 臨也は雨が大嫌いになった。




 男を見るだけで恐怖を覚える
 ようになってしまった臨也は
 、それは酷い有り様だった。


 もちろん仕事に支障は出たし
 、男とまともに会話すること
 さえ難しくなった。


 そんな臨也を救ったのが、薬
 だった。


 唯一臨也が安心出来る男は、
 来神時代の友人数名と、粟楠
 会や取引き先のごく一部の人
 間。それから、自分をそうい
 う目で見ること無く、喧嘩し
 あえる平和島静雄だけになっ
 た。



 粟楠会の四木は、その一部の
 人間に入っていた男だ。



 「飲めば少しは楽になれます
 よ」




 臨也は、気休め程度に進めら
 れた薬を飲みほした。


 まさか自分が薬物から抜け出
 せなくなるなど思いもしなか
 ったため、戸惑うことなく使
 用してしまったのだ。

 実際に、服用した後はとても
 心が落ち着いた。何より、飲
 み終わった後に頭を撫でてく
 れる四木に惹かれ、半分その
 為に使っていた。



 *************



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