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 「シズちゃんも見学?」


 「ああ?」


 臨也が嫌味ったらしく静雄に
 問うと、静雄は殺気を含んだ
 目で睨み付けてきた。


 「こわいこわい!そんなに睨
 まなくたっていいじゃん。何
 で見学なの?」


 「うっせえな」


 臨也は、何故静雄がプールに
 入らずに見学しているかくら
 い知っている。

 静雄は、その力で他人を傷つ
 けることが怖くて、プールに
 入ることができないのだ。

 クラスメイト達と一緒にプー
 ルに入っている間、いつ暴走
 して破壊衝動に駆られるかわ
 からない。

 臨也は静雄が心に秘めている
 思いを知っていながら、尚且
 つこの質問をされると静雄が
 嫌がることも知っていて、わ
 ざわざ声をかけたのだ。

 「シズちゃんも化物に生まれ
 て可哀想だよね。同情してあ
 げるよ、どうせ今まで同情し
 てくれた人なんていないでし
 ょ?」


 「うっせえっつってんだよ!」


 静雄が力を込めると、鉄製の
 プールサイドの手すりが音を
 たててひしゃげ始める。

 その様子に気がついた何人か
 の生徒達がざわざわと騒ぎ始
 め、教師を含めた、その場に
 いた全員が静雄に注目し始め
 た。


 「みんな怖くて体育なんてや
 ってらんないだってさ。結局
 見学してたって誰かしらに迷
 惑かけるんだ、」


 臨也が一言紡ぐ度に、メキメ
 キと手すりの形が変わってい
 く。




 「ほんと化物って可哀想」



 ニヤリと臨也の口角が上がっ
 たのを合図に、静雄が手すり
 を臨也に投げつけた。



 「お、おい平和島!折原!二
 人とも止めるんだ…」



 教師は慌てて言うが、その言
 葉に生徒を注意する迫力など
 微塵も無く、それは教師でさ
 え静雄と臨也を恐れているこ
 とを意味していた。



 「「きゃあ………、!」」


 「あ……!!」


 おかしい。


 臨也は飛んできた手すりをす
 るりと避けて、ニヤリと笑う
 。そこまでは普通だった。

 何がおかしい?



 ――臨也と静雄の他に、プー
 ルを見学していた女子生徒が
 1人いた。その女子生徒は臨
 也が手すりを避けたすぐ後ろ
 に座っていた。


 響き渡る悲鳴に、ざわめきは
 一層強くなり、今度は黙って
 いられない。教師は手すりが
 直撃した女子生徒の元に寄り
 、何人かで保健室に運び始め
 る。



 ――何であの二人の喧嘩にう
 ちらが巻き込まれなきゃなん
 ない訳?


 ――うわ痛そ……。まじあり
 えないんだけど、謝ってもす
 まなくね?

 ――だからあたし嫌だったん
 だよ…!親に頼んでもらって
 まで平和島と違うクラスにし
 てって言ったのに…!


 静雄の思考が停止する。

 女子生徒の足に直撃した手す
 りの回りには、赤い液体が広
 がっている。


 血、なんて見慣れている筈な
 のに。体が固まってしまって
 動かない。


 まただ、小学生の頃にあんな
 ことがあってから。もうこの
 力で誰も傷つけないようにし
 ようと誓ったのに。


 ―ほんと化物って可哀想

 臨也の台詞が思い浮かんだ。
 化物。そうだ俺は化物だ、人
 間じゃない。だけど中身は普
 通の人間なのだ。

 「あーあ、やっちゃったねえ
 ?シズちゃん?」


 黒い笑みを浮かべる臨也に、
 不思議と怒りも湧かない。


 結局授業は中断され、臨也と
 俺は教員共に呼び出された。




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 何だかよくわからない話にな
 ってきた…(´・ω・`)

 い、一応シズイザですからね!
 サスペンスでもなんでもない
 です!←

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