誠綾学園
□第一話
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話は2時間前に遡る――
「じゃ!行ってきます」
「あぁ、荷物は寮に送っておいてあるから」
「ありがとう、父さんも元気で」
今年から父さんは、アメリカの会社に行かなければいけないらしい。
いわゆる単身赴任ってヤツだ。
それで、今年から高校に入る俺――朽葉篤姫は、急遽志望校を全寮制の学校に変えたってわけ。
まぁ受験は楽で良かったけど…。
男子校ってのがちょっと萎えるよなぁ。
彼女欲しかったなぁ。
ちなみに俺んちには母さんはいない。
交通事故だったらしい。
らしいと言うのは、俺がその頃小さすぎて覚えていないからだ。
だからというか、なんというか…。うちの兄は、
「オロローン!!お兄ちゃんは心配だぞおおお!!!」
「うっせぇ!!離れろ鬱陶しい!」
…すんげぇ過保護だ。
いやいや、それは俺を心配してのこと…
「やっぱお兄ちゃんもついて行くぞ!!篤姫ー!!!」
ゴッ
…と思ってるけど、やっぱ鬱陶しい。
あ、今のは俺が兄貴を蹴った音ね。
「じゃあ行ってきます」
「たまには連絡しろよ」
男子校に不満は少しあったが、それでも新しい生活への期待を胸に家を出た。
あ、呻いている兄貴はほっといてね。