ポケモソ・ゴシル

□珍しい表情だった。
1ページ/1ページ

「珍しい表情だった。」



「あ、」
「どうしたんだ」
「やっべ…」
ゴールドは慌てたようにポケギアを取り出した。
「…あちゃー…やっぱり…」
「だから、どうしたんだ」
「ポケギア。充電忘れてさー」
ゴールドは画面も真っ暗なポケギアをはあ、と鞄にため息と一緒に入れて、変わりに一つモンスターボールを手にとった。
「な、シルバー。悪いんだけどさ…今日ちょっくら付き合ってくれねぇか?」
「…それで断るなら今一緒に旅してなんかいないけどな?」
「わりい、恩に着る」
ゴールドは珍しく軽口にも乗らず、顔の前で手を合わせて、もう一度ありがと、と言う。
「…なんだか不気味だな。急に礼なんか、」
「…だってよ、…シルバー、あのな、」
ゴールドは、珍しく小さく俯いて、それから小さな声で言った。
「…俺、今から行くの、…シロガネ山なんだ」
「は?」
「シロガネ山だぜ?上の方なんか雪だってすげーし、たまに電波届かなくなるし…!」
「弱気だな、チャンピオン」
帽子の上に、ぽん、と手を置いて、下から顔を覗き込んで。
「別に処刑されに行くんじゃないだろ」
「…でも、最近あんまり人が入らなくなってっから…道もすごいし、何より野生ポケモンは1番あの辺が強い」
「…12匹だ」
「え?」
「相手が沢山来たとしても、12匹も俺達にはポケモンが居る」
「…シルバー、…ありがとう。じゃあ、俺…俺が、シルバーを守るからな」
やっと、ゴールドは笑った。
ただ、いつもより強張った顔で。

そう、シロガネ山はやっぱり恐ろしい場所だった。
強いポケモン達が沢山住み着いていて、地形自体も険しい。
山頂近くは常に雪が降り、行方知れずになったトレーナーが何人居るかも分からない。

「でも、やっぱりポケギア充電してねぇからもしもの事が有ったら…」
「無い、そんなこと。お前はいつもみたいにしてればいい。…逆に何か有りそうで嫌だ。お前が、チャンピオンがそんなに弱気でどうする。前任が泣くぞ」
そこでゴールドの顔を改めて見ると。
「…俺が、泣きそう…待って、なんか超嬉しい」
両目に涙をため、ゴールドは笑っていた。
「シルバー、俺、なんか、…うん、ありがとう。なんかシルバーに認められるようなこと言われっと元気出るんだよな」
いつも、いつも。
俺の心を引っ掻き回してばかりのゴールド。
そんなゴールドが、珍しく俺に優しく抱き着いてきたりするもんだから。
俺はなんとなく、ゴールドの頼みの難しさに気付いていた。



−−−−−
20100603

ゴールドもただのあほじゃなくて、何気に思い悩んだりもしているんだよ、という話です。
とりあえずリーグチャンピオンのゴールド君。リーグでの華々しい面だけじゃなくて、難しい依頼もこなす、そんな面がチャンピオンに有ったらたぎるなあと。
ここでシルバーにしたお願いの本当の意味が何なのかはいつか書くかもしれないし、書かないかもしれません←

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ