ボクタイ・サバジャン

□馬鹿なのはお互い様。
1ページ/1ページ

「馬鹿なのはお互い様。」



小さな身体であっても、体重が軽くても、全身使って飛び込んで来られればそれは凶器になると思うんだが、そこはどう考えているんだろうか。
「考え無し、だろうな」
「ん?どうしたの?」
「いや、到底お前には理解できないだろう」
「あ、今馬鹿にしただろ!」
「馬鹿を馬鹿にして何が悪いんだ?」
「…〜っ、そこは嘘でもしてないって言うとこだよ馬鹿サバタ!」
ああ今日も10歳児は元気だ。
「馬鹿に馬鹿と言われる筋合いはないが」
「馬鹿馬鹿!サバタの馬鹿っ」
ジャンゴは、まだ起きたままらしく黒の半袖Tシャツとオレンジの短パン姿で、いつの間にかオレのベッドに座り足をぶらぶらとさせている。
「ボクだって前より全っ然頑張ってるし、出来るようになったこと多いから!」
「…ハウンドの群れの中に放るぞ」
「うっ…ひどいよそれ」
ジャンゴは腕をさすりながら、一転、泣きそうに顔を歪めた。
少し前に新市街に乗り込んだ時にハウンドに追い回され殺されそうになったのを思い出したのだろう。
あの時は流石に焦ったが、今こうしてこいつは生きている。
まあそれも運が良かったと言ってしまえばそれだけのことで、逆に運が悪ければこいつも今は土の下だ。
「…うう…なんか思い出したら、痛くなってきた」
腕の傷を押さえながら、ジャンゴはオレのことを見る。
「サバタ、意地悪…」
「…」
仕方がないので、ため息を一つついてから、ジャンゴの腕を掴んだ。
「何す、」
そのまま腕を持ち上げ、傷をちらりと見て、そこに舌を這わせた。
「…うわっ」
「唾付けときゃ治る」
「治る…訳無いっ」
ジャンゴはそれでも口だけで特に抵抗しないから。
「こんな治りかけの傷、薬なんているか」
と、言っておいた。
「…サバタ、噛まないでね」
「は?」
「いや、噛まないと思うけど、さっき犬歯かすったし改めて見るとやっぱ鋭くて痛そう」
「オレはヴァンパイアだからな」
「半分、ね」
ジャンゴは、さりげなく掴んでいるのと逆の手で首を押さえる。
「…首」
だからオレもその首に手をかけた。
「…かっ、噛まないでね!?美味しくないよ!」
「いや、若い奴の血は美味いとか言うらしいからな」
どうかは分からないぞ?と笑って見せると、ジャンゴはふるふると首を振った。
「い、いやそれ女の人だと思う!」
「…女子供、じゃないのか?」
「ちーがーうっ!絶対違う!!馬鹿馬鹿っ!ネロー!オテンコー!!」

「助けるか?」
「まだ大丈夫だ」
今日も晴れだな、と二人の精霊獣は、ぼんやり外を眺めていた。



−−−−−
20100722

いちゃつくサバジャンを真剣に考えた結果、どうしても二人ともが楽しそうな感じにはなりませんでしたというお話です\(^o^)/
お互い愛情表現が下手くそだといいなあと。
精霊獣達は仲良くていいね、とか無責任なことばっかり言ってると思います。
ギルド員達がきっと気にしてくれてる、のかな?

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ