ボクタイ・サバジャン

□抜かしてそれから。
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「抜かしてそれから。」



何度目の夏だろう。
強い日差しはオレの瞳をじりじりと焼く。
気付けばヴァンパイアなんて居なくなってしまった。
皮肉なことに、元ギルドの銃士だったオレは今では最後のヴァンパイアのようなものになってしまった。
「…ネロ」
「サバタ、呼んだか」
「オレは、ヴァンパイアだな」
「は?」
近くに有った鏡を見る。変わらない。
「…生と死から切り離され、今ではもうオレは、最後の…」
ギルドの在り方も変わった。
今では「普通の」武器を携え、指名手配中の罪人を追ったりしている。
「…サバタ、お前はヴァンパイアじゃない。お前は人間だっただろう」
「…確かに、生きるのに血を飲む必要も無ければ、人間を襲うつもりは、ない。けれど、今生きている、いや、生きていると呼べるかも分からないオレは、人間なのか?日の下に棺桶スーツが無ければ出られず、それどころかそれが無ければ雨も身体を焦がす。そんな、」
ネロは、深く息を吐いた。
「変わったな、サバタ。昔のお前は何も気にせず突っ込むばかりだった。だが、今のお前には目標も目的も無い。それでも昔はお前にはあいつが居た…」
「…ジャンゴ」
気付けば、いつも立っているのはあいつの墓前だった。
太陽に照らされたこの下で、静かにあいつは眠っている。
「お前は、どう思う?」
かさ、と後ろで何かが揺れた。
「…サバタ、サバタはヴァンパイアなんかじゃないよ。サバタは、確かに半分ヴァンパイアなのかも知れない、けど…」
聞き覚えの有る声に、思考も、動きも停止する。
「サバタは、ヴァンパイアじゃない。サバタは確かに人間なんだ。だって、ヴァンパイアだったら、ボクの事助けてくれたりなんかしないでしょ?」
さく、さく、と土を踏む音がした。
「それに、サバタの肌、綺麗な白い色!ボク、大好きなんだよね」
はたはたと風になびく赤い色。
「デュマもポー兄妹も、青い肌してた…でも、サバタは、綺麗な白い色。ちょっと冷たいけど体温もちゃんと有る」
足音が、止まる。
「ねえ?サバタ?」
「…ジャ、ンゴ…?」
「うん。ボク。ボクだよ」
ゆっくり、振り返る。
茶髪に、低めの身長。ノースリーブのシャツに、半ズボン。特徴的なブーツに、赤いグローブ。腰に下げた太陽銃、長いマフラー。
「…ジャンゴ…?」
「ただいま」
にっこり。笑った。
「ジャンゴ…!」
「ごめんね、サバタ。もう、一緒に居るから!」


重なる影の先、薄く笑んだ科学者。
彼は踵を返し、彼のメイドと二人、帰っていった…



−−−−−
20100523

うーん、初めてその後話と言うものを書いてみました。
一応「止まったまま抜かされる。」の続編に当たります。

サバタは向かう物があればがしがし行けそうですが、目標を見失った瞬間にふらふらしそうなイメージがあります。
でもジャンゴが居る頃はそれなりに楽しくやってたんじゃないかなあという勝手な妄想ですよ(^^)
ジャンゴはシェリダンさんに死ぬ前にお願いをしておいたんだと思います。

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