リボーン・獄ツナ

□好きで好きです。
1ページ/1ページ

「好きで好きです。」



「獄寺君」
「十代目」
「君は俺が好き?」
「好きです。誰よりも」
「へえ、だから俺にこんなことするのかな」
「そうかもしれませんね」
獄寺君は、にっこりと笑った。
「十代目、俺だけの十代目」
にっこりしたまま、獄寺君は俺の顔の横に、かちゃん、と注射器を落とした。
中身はもう空っぽ。
「貴方が他の奴らと話すのが、貴方が他の奴らに笑いかけるのが、貴方が他の奴と同じ空気を吸い生きているのが、許せないんですよ」
獄寺君は、机の上の瓶から、錠剤を何粒か取り出して、口に含んだ。
「獄寺君は、俺が好きなんだね」
そのまま、俺の唇は獄寺君のそれに塞がれる。
ころん、と舌に錠剤が落ちた。さっき見たのより少ない。
「…獄寺君も、飲んだんだ」
「貴方と一緒に逝くんですよ」
何の抵抗もしない。
吐き出しもせず、すぐ俺はその錠剤を飲み込んだ。
「うわ、なんか重い、身体」
「そっすね」
獄寺君は俺が寝転がったベッドの横に座って、俺を見ながら相変わらずのにっこり笑顔で、またまとめて何粒かの錠剤をまとめて飲んだ。
「沢山飲むんだね」
「貴方をお待たせする訳には行きませんからね」
「そっか、優しいね」
「ありがとうございます」
それから少しして、獄寺君は、俺の身体にぎゅ、と抱き着いた。
「どうしたの?」
「十代目と、はぐれないために」
「あ、それ良いね」
俺も、獄寺君に抱き着く。
「いつもより、なんか冷たいなあ…」
「今からもっと冷たくなりますよ」
「そっか…」
獄寺君は、俺のことを抱きしめたままで、やがて不規則な弱い呼吸をし始めた。
まるで、喘いでいるような。
「獄寺君、苦しい?」
「十、代目と、一緒に居られるなら」
「大丈夫?」
「はい…!」
獄寺君の背中をさすっていると、だんだん俺自身もまぶたが重くなってくるのを感じた。
「あ…なんか…来た、かも」
「十代目、…苦しく、ないです…か?」
「大丈夫…かな?…でも、だんだん、力、抜けてきた、かも…」
二人で最期の力で身を寄せ合う。
絶対離れないように。
「…好きだよ」
「…好きです」
「今度は、二人きりで」
「ずっと、一緒に…」
指を絡ませて、笑いあった。

瞬間。
世界が揺らぐのを見た。



−−−−−
20100508

獄ツナで、死ネタです。
…うん、かなり楽しかった…!
心中っていつか書きたかったんですよね…!
獄ツナならお互いに一瞬で散らしてもいいかなあと思ったのですが思ったより萌えなかったのでこうしてみました。
あれ、こんなの昔書いた気が、気のせいだといいなあ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ