リボーン・獄ツナ

□貴方から離れるなんて。
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「貴方から離れるなんて。」



貴方は相変わらず優しく笑った。
俺のスーツ越しにそっと胸に手を合わせて、
「…いってらっしゃい」
と、笑ったんだった。
「いってきますね、」
そう言ってそっと一歩下がれば、俺の胸から指がするりと離れた。
「…」
十代目は指先を追うように下を向いてしまった。
「十代目?」
「…ね、獄寺君」
十代目は力無く落とすように下ろした手を少し握り、まるで囁くような声で言った。
「獄寺君、…あのさ」
「はい」
「…ちゃんと、いかなきゃ…駄目だよ」
小さな声が、言葉の意味と真逆に、俺の足を地面に縫い付ける。
「…」
十代目の後ろの壁の時計は、出発時間を告げていると言うのに。十代目は、行けと命令を…
「…してください」
「…」
「ちゃんと、十代目、命令を、してください」
十代目が、ばっと顔を上げた。
その拍子に瞳からはらはらと涙が零れ落ちる。
「…やだよ!!」
俺のスーツを、今度は皺になるほどに掴んで、十代目は涙を流した。
「行かないでって…!本当は、…行かないでって、言いたい…!!」
十代目は、崩れ落ちるように地面に座り込んで声を上げてわあわあと泣き出した。
「…十代目…」
十代目の肩に手を伸ばしかけて、引っ込める。
…俺が、十代目を、傷付けるだけのような気がして。
「ねぇ、獄寺君…!俺、やだよ!行ってほしくない!!」
…時計の針が回る。
ああ、もう飛行機に間に合わない。

…いや、間に合わなければ、いいのに。

「十代目、…ごめんなさい」
「獄寺君…やだよ…」
「貴方を守るために、貴方から離れる、…やっぱり、矛盾ですか?」
十代目は、俺のズボンを握ったまま、俯いた。
「…矛盾だよ、笑っちゃうぐらい、矛盾だよ。…お願いだから…ううん、命令する。行くな…!」
「十代目の、望みとあらば」
俺は、わざと重々しく頭を垂れてから、十代目の手を握って立たせ。
「…いいの…?」
未だに潤んだ瞳のまま、小さな声で聞かれるのに、
「誰になんと言われても、俺のボスは十代目です」
と笑ってみせた。
「ありがと…」
十代目を抱き寄せ、抱きしめる。
「…獄寺君、俺、やっぱ君が好きだ…」
「俺も、貴方以外なんて」



−−−−−
20100429

獄寺君は「ボンゴレの右腕」として将来色々辛い思いもすると思います、が。
結局十代目の涙と我が儘で十代目の傍からは離れられないんじゃないかなあと思います。
十代目は結局権力行使できる「十代目」の立場をなんだかんだで色々使ってやってるんじゃないかなあと思ったりもします。

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