命のナマエ
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少女は急いで馬を走らせた。
自分が何処に向かっているかなんて、もう分からない。
方向感覚などすでになかった。
「ロッセ、止まって」
どれくらい走ったのだろう、白い馬は静かに足を止める。
少女はじっと後方を見た。
もはや、ずいぶんと離れているこの場所では何も聞こなかったし、見えなかった。
ロッセは不安げに彼女を見上げる。
「・・・・・・」
ロッセの主人はその背から降りることなく、静かにその白い首筋に腕を巻きつける。
嗚咽も、泪も降ってはこなかったが、主人が悲しみにくれているのを愛馬だけは知っていた。
―−――――――――――――
周りは木ばかりだ、
木、木、木、そして、木。
360度回転しても木だ。
「ふぅ、困ったわね。」
灰蓮はため息を落とした。
彼女は完全に道に迷ってしまって、
手に持っていた地図を鞄のなかに放り込んだ。
だいたい入ってきた場所も不明なのだ。
もう今更、役には立たない。
「にしても、あの子はどこよ?」
きょろきょろと辺りを見回す、
旅を共にしていた愛馬は今おらず、彼女は辺りを歩いて探していた。
「はぁ…お腹すいたぁ・・・」
食料はもうほとんどなかった。
何処に行こうにも当てがない、現在位置さえ分からない。
そして・・・
「なんで誰もいないのよ・・・」
誰にも出会わない。
「ああ。あたし、とんでもない所に迷い込んでないでしょうね…」
独りぐちて、ひたすら進む。
そうしている間にもお腹はグーグー鳴った。
「あー、もー、ガンダルフーっ!
ロッセーっ!
誰でもいいから、早く来てよ…。」
あたしは疲れで歩けそうにくて、その場にしゃがみこんだ。
その瞬間、何の言葉分からないけれど、
怒りに満ちた声が聞こえてあたしは振り返った。
それは確かに怒鳴り声なのに、
聞いた事のないくらい綺麗な声と綺麗な言葉に
あたしは思わず、魅入られてしまった。
07 turn red-紅葉-