命のナマエ

□(4)
2ページ/4ページ




「聞きたいことが山ほどある。質問してもよいかの?」


落ち着いた所で、ガンダルフは灰蓮に問いかける。
彼女が軽く首を縦に振ってうなずくと、ガンダルフは重い顔もちで口を開く。



「まず・・・お前さんは囚われてからの事を覚えておるか?」


それを聞かれた瞬間、自分の右手ががたがた震えだす。


(オモイダシタクナイ)


頭の中にあるのは無数の記憶、今はまだ順番がバラバラで布の端切れみたいなもの。
繋ぎ合わせることができれば、それはあたしの2年間の物語。

でも私の場合、そんな大反れたものじゃない。



「・・はい。」



言い終わった瞬間、今の一瞬が一生のように感じた。
声も震えていたかもしれない。
この恐怖と不安が彼に伝わらなければいいのに。

自分の手を握り締めた。



「じゃが、まだ記憶は整理しきれとらんだろう。
もちろん、お前さんが答えれる範囲以内で答えてくれれば良い。」


「はい」


「サルマンが言っておった事じゃ、
お前さんは異世界から来たのだと。

それは、本当なのか?」


私は返事の代わりに小さく頷いた。


「そうか。」


彼は声を落とした。


「サルマンの言った通りです、
あたしは中つ国の人間じゃない。
別の世界から来ました、信じられませんか?」


「いいや、そんなことはない。」


ガンダルフはそうハッキリと言った。
そして彼はすぐにあごに手を当て考え込んだ。


彼がどう思ったにしろ、考えてるにしろ、
あたしは自分の全てを話すつもりはない。


正直、このどうしようもない苦しみから解放されたい。
でもそんなことは許されはしないから。



「では、この世界に来るまでの話を聞かせてはくれぬか?
お主に何があったのか、どうしてサルマンの所に囚われていたのかを。」



彼は杖においていた手をゆっくり持ち替えた。
あたしは頷いてゆっくり話し出した。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ