命のナマエ
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―――白の魔法使いに囚われた日。
この日は、あたしにとって一番最悪の日だ。
否、最悪で片付けられないくらい、忌まわしい…。
あの時、なんでサルマンに会ってしまったのか。
いや、それ以前にこの世界に何で来てしまったのか。
来なければよかったのに。
だって、
あの日以来、あたしはあたしじゃなくなった。
生きているのかも死んでいるのかも分からない。
心が死んだのだとさえ思えた。
途切れと途切れの幾重の記憶しか無いのに、
自分がした事だけは覚えている。
生きる目的を失いながら、あたしの心は常に暗闇と炎に包まれていた。
「此処から逃げるなど考えないことだ。」
「お前は闇そのものに値する力を秘めている」
「力を差し出せ」
「全て灰にしろ、さすれば自由にしてやろう」
「帰れる訳がなかろう、その手を見れば分かる。」
繰り返される呪文に似た声に、絶望する日々。
何に希望を見出したらいいのか、分からない。
何を目的に生きればいいかも。
だけどその中で、彼はただ一人、
光輝くあたたかい言葉を与えてくれた。