命のナマエ

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「痛っ!」


ゴツンと、足を階段の角に当たってしまい、彼女は顔をしかめた。
焦燥感を感じた割には大事にも至らなかったし、ケガというほどに何かあったわけじゃない。


でも



「さっきの、何・・・?」


気になっているのは階段から落ちたことではなく、落ちる前。
誰かに引っ張られた感覚が足首に残っている。


もちろん辺りには誰も居ないし、
そんな事があるはずがない。


だけど、この世のものでないような妙な違和感が、薄暗い廊下と同調し〔気持ち悪い〕という思いを強くさせた。


(思い違いならいいけど・・・)


とにかくココにはいたくなかった。早く抜け出したい。

そう思って立ち上がろうと床を手で軽く押した。



その時、手には廊下の冷えた温度となめらかな手触りを感じた。



だけど、何かが変わった。



すぅっと消えるように、それは一瞬に。



足と手に感じるゴツゴツとザラザラの感覚。



岩場が地面のような荒れた土地だった。




「・・・うそ・・・」



周りを見待たせば、何もない。



永遠に続く荒れた土地に。















「どうして・・・」



ぎゅっと手を握り締める。



嘘だと信じたかった。



此処にあるもの全てを夢だと叫びたくなった。





恐ろしくて怖くて、不安で…




「ここはどこ?」




灰蓮は夢が覚めるように祈りながら、
そこに広がる世界に目をそむけた。
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