命のナマエ
□(2)
2ページ/3ページ
「痛っ!」
ゴツンと、足を階段の角に当たってしまい、彼女は顔をしかめた。
焦燥感を感じた割には大事にも至らなかったし、ケガというほどに何かあったわけじゃない。
でも
「さっきの、何・・・?」
気になっているのは階段から落ちたことではなく、落ちる前。
誰かに引っ張られた感覚が足首に残っている。
もちろん辺りには誰も居ないし、
そんな事があるはずがない。
だけど、この世のものでないような妙な違和感が、薄暗い廊下と同調し〔気持ち悪い〕という思いを強くさせた。
(思い違いならいいけど・・・)
とにかくココにはいたくなかった。早く抜け出したい。
そう思って立ち上がろうと床を手で軽く押した。
その時、手には廊下の冷えた温度となめらかな手触りを感じた。
だけど、何かが変わった。
すぅっと消えるように、それは一瞬に。
足と手に感じるゴツゴツとザラザラの感覚。
岩場が地面のような荒れた土地だった。
「・・・うそ・・・」
周りを見待たせば、何もない。
永遠に続く荒れた土地に。
黒
い
空
・
・
・
「どうして・・・」
ぎゅっと手を握り締める。
嘘だと信じたかった。
此処にあるもの全てを夢だと叫びたくなった。
恐ろしくて怖くて、不安で…
「ここはどこ?」
灰蓮は夢が覚めるように祈りながら、
そこに広がる世界に目をそむけた。