命のナマエ
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彼の言いつけ通り、指輪を使わず注意を払っていたのだが、一向に魔法使いは帰ってこなかった。
途切れ途切れに続いていた便りも、かれこれ5年以上来なくなっている。
「・・・ガンダルフは一体いつに来るのだろう。」
フロドは浮かない表情でため息をつき、ガンダルフを見送った時を思い起こした。
彼が手を振ったのを最後に、たちまち黄昏に消えてしまったあの時のことを。
「本当に来てくれるのだろうか・・・」
もはやホビット庄のことさえ、忘れているのかもしれない。
穏やかな風に木々が揺れ、フロドの声は葉擦れの音に溶けていった。